きょうもまた、2時ぐらいに目が覚めたので、パーヴォとフランクフルト放送交響楽団による、ブルックナー交響曲第1番を聴いています。
このブルックナー交響曲第1番には、「リンツ稿」と「ウィーン稿」とふたつの楽譜があるそうなのですが、パーヴォは、ブルックナーの想いにより近いリンツ稿を選んだ、とライナーノーツには書いてあります。ブルックナーは生前、自分の交響曲には、常に手を入れ、改訂を試みたそうです。ワーグナーへの傾倒は「”偉大なる巨匠”への狂信徒」と呼ばれるほどだったそうですが、実際に第1楽章(アレグロ)を聴いてみると確かに、ワーグナーの影響がすごく強い、という印象を受けました。第2楽章(アダージョ)は、暗く打ち沈んだ曲想ながら、緩徐楽章としての落ち着きと穏やかさも保たれており、不思議な魅力をもって、私たちの胸に迫ってきます。
そして第3楽章(スケルツォ)。激流を渡るがごとき、激しさと逞しさを兼ね備えた名演です。不安定な旋律ながら、力強さを持っており、ブルックナーの強烈な個性は、もうワーグナーの亜流とは呼ばせない、威厳にみちた曲想であることに気づき、私は、感無量の想いがします。ティンパニーが不穏な空気を醸し出し、弦楽器と管楽器がそれぞれ、不安な気持ちを助長させるかのようですが、やがて長調に転じます。
そして、最も有名な旋律の第4楽章(フィナーレ)。高らかに、神の国の勝利を歌い上げます。ブルックナーは、交響曲第1番をつくるにあたって、最初に、この4楽章から作曲を進めたそうです。この交響曲では敬虔なカトリック教徒だったブルックナーの、神と人間との相克への苦悩が終始描かれていました。が、第4楽章をもって、神の力強い裁きによって、迷うことなく、信仰への道を歩むのであろうブルックナーの、魂の勝利がうかがえます。漆黒の闇のなかから、神々しい光に満ち溢れ、神の手の中に、自らの信仰を捧げ、ありとあらゆる悪の誘惑を断って、光の中に、進んでいくブルックナーの「決意」を、このグランド・フィナーレからくみ取ることができます。
パーヴォは、このブルックナーの苦悩と、神との葛藤に寄り添いながら、力強く逞しく生きる人間の精神の強靭さにスポットを当て、ブルックナーのなげかけた疑問に明快に答えます。その苦悩を解決するのは「芸術を愛する人間の魂」に他ならないと。
こうして、光の中に、大団円を見出す、ブルックナーの交響曲第1番でした。聴いていて、とても勇気が湧いてきましたし、私も悩みの多い人間ですが、神の道をまっすぐ歩むブルックナーの想いを受け止めることができて、力強く生きていこうと改めて決意しました。パーヴォの解釈はまさに私の意を得たり、とするもので、感嘆の声をあげてしまいそうになります。
本当に、パーヴォ、ありがとう。
チコ@リサ(桂木里紗)のmy Pick
