忘れられないあの味や、味とともに蘇るあの日の思い出ーー。作家や料理研究家、デザイナーなど、様々な分野の第一線で活躍する著名人が、「思い出のごはん」をテーマに綴ったエッセイ集。家庭の味から海外で食べたひと皿、さらには「どうしてこうなった!?」という珍品まで、多種多様な料理が登場。きっと共感する一編があるはず。ときにほろりと涙が流れる、味わい深い三つ星級のエッセイを75作収録。


75人75作の豪華なエッセイアンソロジー。馴染みのある方も多く、興味深く読みました。一人当たりおおよそ3ページの限られた文字数でぎゅっとエピソードが詰め込まれていて、どのお話も面白かったです。いろんな方の人生の一部を覗かせていただきました。食べることは生きることに直結するから、ぐっとその人に近付けるような気がしました。


必ずしもほのぼのとした思い出だけでなく喜怒哀楽が入り混じっていて、それもまた良かったです。たまにしか会えない孫の為に慣れない料理を作りすぎた祖父母に対して食べ残してしまった罪悪感だとか、運動会のお弁当の時間に母親とうまく合流出来なかった心細さと申し訳なさだとか。そんなことばっかりやけにはっきり覚えているのわかりみが深い。


出身地も年齢も生まれ育った環境も違うはずなのに、あ〜うちもそんなことあったなって懐かしくなるエピソードばかりで、ちょっと涙腺が危なかったです。なんでなんだろう?皆似たようなことを経験してるのかな。


きっと書いた人は依頼を受けてから「何を書こうかな」といろいろ思い出して厳選したんだろうな、と思うとそういう背景も含めてすごく愛おしい気持ちになりました。


もし自分にこのタイトルで執筆依頼がきたら何について語ろう?と考えると勝手に楽しめるのでオススメです。3歳の誕生日が父親のおちゃめ心で山菜おこわになってから、妙に気に入ってずっと誕生日のメニューが山菜おこわだったこと書きたいな〜。