記録的な猛暑がおさまり、10月も終盤にさしかかったころ、私はいまだかつてない体調不良で部屋中をのたうち回っていた。
歩けばめまい、座れば吐き気、寝れば悪夢の三重苦。思考はまとまらず、体はぐったりと鉛のように重だるい。いったい何の呪いであろうか……うすらぼんやりした頭で料理していたら、指をサックリ綺麗に切った。
水分すらも「おえっ」と受けつけず、気づくと一週間で2キロ痩せ!すわ、ナチュラルにダイエット成功〜なんてお気楽な気持ちになるワケもなく、言いようのない怒涛の不安と絶不調にひたすら向き合っていたのだった。
どーにも体調がおかしい、とうっすら気づいたのは4〜5日前か。
軽いフラつき、頭痛、倦怠感…あれ?いつもの市販薬が効かないな…なんて呑気にスルーしたのが運のツキ。事態はみるみる深刻化、ついにはベッドから起き上がれなくなり、己の身に何が起こっているのかと戦慄した。
しかし心当たりはある。あれしかない。そう、先週耳鼻科(鼻炎)で出された薬だ。とはいえあくまで処方薬、飲み合わせも当然チェック済みであり、薬としてもごくポピュラーな代物である。んなことがあるだろーかと思いつつ、ある確信を持って私は薬局に問い合わせたのだった。
はたして予想は的中した。
薬剤師「あ〜それ、クラ○ス(抗生物質)でほぼほぼ黒ですね。飲んでるお薬の副作用を強めてしまうことがあるんですー。すぐいらしてください」
私「やはりそうですか…あ、薬は中断していいですよね(もうやめてるけど)」
薬剤師「はい、やめても症状が収まるまで一週間くらいかかりますけど」
私「えっ? い、いっしゅう…かん……?(絶句&白目)」
帰宅した子に助けを借り、満身創痍でクリニック到着。いざいきさつを伝えるも、思考も呂律も回らず一苦労である。長々と要領を得ない説明に医師の心のため息が聞こえてくるようだった。が、状況を見かねた傍らの看護師が「それは○○ということですよねっ?ねっ?」と助け舟を出してくれ、なんとか言葉を繋ぐ。まっこと感謝しかない。
ひととおり話を聞いた若い女性医師は無表情のまま「吐き気は薬のせいですかね。他の症状はかかりつけの病院で診てもらってください。吐き気止めは出しておきますので」とひと息に言った。
幽霊のような足取りで診察室を出ると、看護師の「お大事にぃ〜」の温もりのある声が背中から追いかけてきた。
吐き気は薬でおさまったものの、未だしんどい身体症状と、さらに悪夢と向き合わねばならない。便宜上悪夢と呼ぶが、んなナマ優しいもんじゃなく、あれは夢のフリした”異常体験”だ。支離滅裂で阿鼻叫喚、下劣で醜悪(ここには書けないが)、記憶も現実のように生々しい。
日中何気なく目にした情報がディテールに還元されるので油断もできない。例えば公共のトイレでふと気に留めた瑣末な汚れが、形を変え、すさまじい嫌悪感を伴って夢のワンシーンに変容していく。夢ともうつつともとれない場所で脂汗をベットリはりつけながら、ただただ一週間を格闘した。
おかしかったのは回復に伴い、悪夢の度合いが綺麗に薄まっていったことだ。それは暗闇に次第に光が差すようにきっちり同分量ずつマトモな夢に置き換わり、最終的に見事なグラデーションの弧を描いた。あぁこれで一安心、と確信に変わった瞬間である。
とにもかくにももう薬はこりごりじゃーい、という心境になり、(突然の中断が推奨されないことは百も承知で)これまで何種も服用していた整形外科(首&肩凝り)や不定愁訴(自律神経系)や円形脱毛(!)の薬もスッパリ(乳がん以外)やめてしまった。
やめてみるとアラ不思議、痛みがさして変わらないではないか。体が慣れてしまったのか、服薬に費やしたこの数年間はなんだったのかという気分にさえなる。これは中断して数ヶ月を経た今も変わっていない。
薬との付き合いを考えさせられた数週間、そう薬は飲み方が9割、もとい、正しく効いてナンボである。いや〜副作用って本当に怖いですね〜〜(皆様も気をつけて!)と水野晴郎風(古っ)に独りごちてひとまず筆をおきたい。合掌。