2023年 月 日()
母へー
お母さん、私はなぜ産まれてきたのでしょう。
あなたにとって自分の思い通りにならない、何の役にも立たない私が生き残って、双子の姉が亡くなった。
あなたは私に言いましたね。
双子の姉が亡くなったのは、私が元気すぎてお腹の中で動くから臍の緒が姉の首に巻きついたせいだと。。
高校生の時、友達に打ち明けたらあんたは人殺しだとなじられた。。
胎児だった私に姉の命を奪おうなんて意思もなかったはずなのに。。
私は産まれなくても良かったのに、姉の代わりに死んだ方が良かったのに、私は産まれて生きてしまった。
どうして双子の姉が生き残らず、私が産まれて来てしまったのかを50年間どれほど思ったことでしょう。
どうして死んだのは姉だったのか、どうして助かったのは私だったのか。。。
これがあなたが受け止めろ、という運命ですか。。
お母さん覚えていますか。
未熟児で産まれた私が退院した日のことを。。
私が初めて一歩歩けた日のことを。。
お母さん、覚えていますか。
私が1番初めに話せた言葉を。。
そして、あなたが出て行った日のことを。。。
私は何事もなかったかのように、学校の帰りに肉と野菜を買い夕食の支度を始めた。
お米を研ぎながらなぜか涙が止まらなかった。
お母さんがいない。。。
もう2度と帰って来ない。。。
ボロボロと涙がとめどなく溢れ、研ぎかけのお米の中に次々と落ちていった。。
言葉にならないー。
高校3年の秋でした。。
そして母の役割を降りたあなたは親であるのに他人になり、だんだん離れて行きました。
そして尚、あなたは縁を切りたくても切れない、最も私を苦しめる相手になりました。。
私は知りたかった。
あなたが家を出て行ったとき、どんな覚悟をしていたのかを。。
どんな未来を見据えていたのかを。。
何を言っても分かってもらえなかった。
何を言っても変わらなかった。
何十年経ってもいくつになってもあなたはいつも同じー。
いつも同じー。
ずっと同じー。
ただ同じー。
そしてあなたは常軌を逸した。。
どんなに太陽がキラキラ降り注ごうとも、どんなに美しい花々が咲き誇ろうとも、どんなに嵐が来て豪雨に打たれようとも、私の真っ黒に染まった胸の真ん中はもう元には戻らない。。
納得などしていない。
何ひとつしていない。
あなたの弱さも狡さも、母でなくなったあなたの心も、顔も、何ひとつー。
お母さん、私はあなたを忘れます。
あなたを捨てます。
かつてあなたのエプロンを捨てたようにー。
お母さん、私のことも忘れてください。
葬ってください。
その分、亡くなった双子の姉を愛してあげてください。
精一杯可愛がってあげてください。
私からの最後のお願いです。
あの時、50年前のあの時、もし早産でなかったら、もし姉ではなく私の首に臍の緒が巻き付いていたら、私がこの世に生を受けずに済んでいたならどんなに楽になれたことでしょう。
でも遂に永遠の別れの時が来ました。
長い長い道のりでした。
さよなら、お母さんー。
追伸
私もいつか死ぬ。
そして、もう一度産まれるー。
本文テキスト
今日かなしかったこと
本文テキスト
本文テキスト
