●ベッチー的映画三昧日記

 先行きが見えない混沌とした今のアメリカの社会状況だからこそ、受けた作品「ワン・バトル・アフター・アナザー」

   

   2025年第98回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞(ショーン・ペン)、脚色賞、編集賞、新設されたキャスティング賞の最多6部門に輝いた作品。

 ついにポール・トーマス・アンダーソン監督がアカデミー賞を取った。本作は彼らしく3時間近くの長尺、レオナルド・ディカプリオをはじめ、ショーン・ペン、べニチオ・デル・トロなど豪華キャストで多文化共生のアメリカの闇を描いたスリラードラマだ。

 「フレンチ75」という革命組織の爆弾担当として、かつて世間を騒がせた革命家のボブ(レオナルド・ディカプリオ)は、隠遁生活を送っていたが、大切なひとり娘(チェイス・インフィニティ)を拉致される。ボブは娘を取り戻そすため、次から次に迫る刺客たちとの戦いに身を投じることとなる…。
 
 前半はボブと女性革命家ペルフィディアとの成り染めと娘が誕生するまでを1時間余りを使い丁寧に描いている。後半は15歳になった娘が軍にさらわれ、ボブが取り戻そうと奮闘する姿が描かれる。その過程で移民問題や分断、白人至上主義などアメリカの今日問題が提示される。
 3時間弱の長い作品だが、色々なエピソードがてんこ盛りなので不思議なことに飽きることなく、最後まで観てしまう。

 キャストとしては無慈悲な軍人“ロックジョー”を演じるショーン・ペンと超過激な女性革命家を演じるテヤナ・テイラーが、最凶の切れた演技だ。得体のしれない空手道場のセンセイを演じるべニチオ・デル・トロも面白い役柄だ。彼らの中にいるとディカプリオが演じるボブは至極真っ当な人間に見えてしまう。とにかく、色の濃いキャラクターが大勢登場するハチャメチャなアクションなので飽きなかったのだろう。
 しかし、本作がアカデミー賞6部門を撮った作品かと思うと、ちょっと…。かつてのアカデミー獲得作品のような重厚さと社会性のある作品ではない。アカデミー賞は時代を反映するものというが、映画自体がしかりだ。先行きが見えない混沌とした今のアメリカの社会状況だからこそ、受けた作品なのかもしれない。