
「老兵は死なずただ消え去るのみ」
今年の夏、ロンドンオリンピックの閉会式イベントで、デビッド・ボウイの曲が流れビデオが流れた。
本人が出てきて歌ってほしかったなあ~とその時は思った。
もうライブ活動をしていないボウイは、出演依頼を断ったのだそうだ。
そのことを思い出し、今日は、デビッド・ボウイは潔いアーティストなのだと敬意をいだきたくなった。
この週末、オースティンで毎年恒例の野外ロックフェス「ACL」が開催された。
金曜からの3日間、金曜のトリはブラック・キーズ、土曜のトリはニールヤング、そして日曜のオオトリがレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。
ニールヤングを見たかったのだけれど、息子の学校バンドのボランティアで帰宅したのは深夜0時過ぎ。
ニールヤングのステージもとっくに終わっている時間。
あまり期待せず、オオトリのレッチリがどんなかチェックしておくか・・・と、ネットのライブ中継を見てみる。
レッチリのステージが始まる前の時間、再放送でイギーポップが放映されている。
イギーポップ・・・
ロックの、「老兵」だ。
ステージに出てきたイギーを見て、すぐに思った。
見なきゃ良かった。
70年代の姿そのままの姿を再現したイギーは、上半身裸。
70年代の若い頃なら、それも「ロック」だったのだろうけれど、69歳のイギーはそうはいかない。
突き上げた両腕の、二の腕の下には、プルプルと申し訳なさそうな脂肪がはためく。
いや、太った脂肪がたれているのではない。いわゆる「こうもりの羽」と呼ばれる、ハリをなくした皮膚がハタハタと垂れ下がる状態。
はだけた胸も腹部も、シワだらけでハリのない肌が目に痛い。
誰だって年を取るし、69歳で往年のヒット曲を歌い、Fワードを撒き散らす達者な姿は讃えるべきかもしれないが、いや、やっぱり、イタイ。
気持ちは買うが、昔のようなステージはできないと出演を断るデビッド・ボウイは、やはり潔い美学の持ち主なのだ、と、ここで思ったわけである。
「テキサスなまりでF***と言ってみろ~!」と観客をあおるイギー。
いい年してFワードがかっこいいと思っているのかよ~、とつい、これもイタく思える。
結局大半を、音声だけ聞きながら、見るのは勘弁させてもらった。
そんなイギーの再放映が終わり、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの登場。
イギーほどではないにしても、レッチリも今が旬というより年令高いはず。
私が持っている彼らのCDは、80年代の終わり頃に買ったものだ。
ステージに現れたベースのフリー(「蚤」というニックネーム)の姿にまず驚いた。
コワモテの顔に、ムラサキに染めた角刈り、そして派手なジャンプスーツ。
今時、その年令(49歳)でそのいでたち・・・。
がしかし、ステージが進むにつれ、その姿でキレ良く動き回るフリーには完敗。
イギーポップの姿に「やっぱ、ロックは若者の特権的な美だわ」と思ったのが、みごとに覆される。
フリーのおっさん、動く、動く。
それが攻撃的で全身ロックしてる。すごいわ、この人。
オリジナルメンバーでなく後に加わったギターだけが30代。
その一番若いジョッシュがなぜかほとんどイスに座って演奏。
(しかも衣装が、アディダスのジャージにチェックのネルシャツ)
フリーのおっさんがしなやかに動き回るのと対照的にクール。
最初は「どんなもんだか少しチェック」で見始めたのが、やめられない。
初期の曲も演ってよ~!と、聴きたい曲を待ちわびるほどになっていた。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、見事にオオトリの盛り上がり。
見られて良かった~と嬉しくなるステージだった。
もうずっと聴いていなかったレッチリのCD、取り出して聴きたくなった。
本日のピンズは、テキサスATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)のピン。
BGM「Give It Away」レッドホットチリペッパーズ