バレンタインデーの本命チョコと言えば。
手作りかつピンク色のハート型が定番。
だけどそれはもう…。
去年のバレンタインに渡してしまっている。
私の彼氏の凛ちゃんはとてもお料理上手。
だから私も本格的なチョコをあげたくて。
たくさん頑張って調べて手作りしたよ。
初めて作ったチョコにしては
なかなかの出来栄えだったね。
凛ちゃんもすごく褒めてくれて嬉しかったな。
今年も同じ手作りチョコを凛ちゃんに渡す?
凛ちゃんなら喜んでくれると思うけど。
前と一緒じゃどこか特別感に欠けていて。
チョコとは別に何かプレゼントするとか?
そう閃いて1人で買い物に来てはみたけど。
凛ちゃんはすごくオシャレな男性で。
デートに着てくる服とかピアスとか
いつも素敵でカッコいい物ばかり…。
身につけてもらえそうな贈り物は
自分のセンスが問われるようで…、
ハードルが高くて緊張しちゃうな。
チョコと一緒に受け取ってもらえそうで。
気軽に普段使いしてもらえそうなもの。
値段もそれほど高くなくていい。
こういうのは気持ちが大事だから。
偶然横を通りかかった雑貨屋さんには
香り付きのハンドクリームが売られてた。
ハンドクリームなら前に凛ちゃんが
私の手に塗ってくれたことがあるし…。
そのお礼だよと言ったら渡せるかな?
イチゴの香りに桜の花の香りとか
春生まれの凛ちゃんに似合いそう。
こっちにはレモンの香りもある。
だけどこれは私のイメージになっちゃうかな?
いつも私をそばに感じてほしい。
そう言って凛ちゃんにこれを渡したら…。
凛ちゃんどんな顔をするだろう?
普通にありがとうって言うかな?
真っ赤になって照れてくれるかな?
ハンドクリームを一つ買うだけなのに。
今ひとつ勇気が出せない
自分がなんだか悲しいな。
「何かお探しですか?」と親切な
店員さんが声をかけてくれるけど。
買おうか迷ってる理由が説明しづらい。
「男性へのプレゼントに…」
「このハンドクリームはどうかなって?」
最近は男の子でも普通にお化粧するし。
美容に興味がある男の子が世の中にいるなら
ハンドクリームを買う男性だっているはずだ。
店員さんはにっこり笑って
「それなら…」と私に言った。
「お客様がご覧になってる商品は男性、
女性の両方にとても人気があるんですよ」
「手に塗ってもサラッとしてベタつかないし」
「ボディクリームとしても使えます」
「香水の香りが苦手なお客様とかは
香水の代わりに耳の裏に塗るそうですよ」
「そうすると匂いに包まれる感じがするとか」
「プレゼントしたい男性がもしも彼氏さんなら…」
「お客様も彼氏さんの耳に
塗ってあげてはどうですか?」
「きっと喜ばれると思いますよ」
店員さんに彼氏と言われてドキッとしてしまった。
私が凛ちゃんの耳に触れる距離まで近づいて…?
想像するとドキドキしちゃう。
凛ちゃんとお付き合いする前の私なら
きっと普通に塗ってあげるって言えた。
でも今は少し違ってる。
凛ちゃんが好きって自覚して以来
ずっと心でドキドキしてるだけ。
だけどそれだけじゃ何かが満たされなくて。
凛ちゃんが私に触れてくれたみたいに
私だってもっと凛ちゃんに触れたいの。
私だって凛ちゃんのことが大好きだから。
「このレモンの香りのハンドクリーム下さい!」
私は勇気を出してレモンの香りの
ハンドクリームを買うことにした。
私がプレゼント用のラッピングをお願いしたら
店員さんが凄く張り切って可愛いくしてくれた。
帰り際には「頑張ってくださいね」と応援まで。
応援してくれる人がいるなら頑張ってみようかな。
凛ちゃんに渡すのが楽しみになってきた私は
帰り道に何度も紙袋の中身を確認してしまう。
あとはどうやって塗らせてもらうかだけど…。
バレンタインデーまであと少し。
今年も手作りチョコを準備したいし。
素直に塗らせてほしいって言えるように、
バレンタインまでに練習をしておかないと。
凛ちゃんに恋をしたらその分
悩みもたくさん増えてしまった。
だけどそれを私は楽しいって思ってるの。
これも恋の悩みなのかな?
そうだったらいいなと思ってる。
(終)