げんじゅうさんは、事故で右手が親指しかありません。
タオルをもって背中を洗う事も、箸を使ってご飯を食べる事もできません。
でもげんじゅうさんは、わさびをつけて刺身を食べたいし、豆腐を食べたいと思っていました。
そこで、げんじゅうさんは考えました。
親指が動くようになってきたのだから、これを利用して、親指だけで使える箸を作ろう、と。
慣れない左手で、親指だけで使える箸の図を紙に書きました。
箸が二本ともくっついていて、てこの原理でものを挟める箸です。
これを作ってもらおうと、げんじゅうさんは業者をまわりました。
しかし、儲けにならないと、何社も断られてしまいました。
怒り、諦めたげんじゅうさんは、自分で作る事を決めました。
五本の指がある左手と、親指しかない右手で。
試行錯誤を重ね、やっとの思いで完成しました。
その箸は、立派にできていて、げんじゅうさんは、
「豆腐みたいな柔らかいものも箸で掴めるし、朝昼晩箸を使ってご飯を食べられる事が嬉しい」
と言っていました。
私は看護実習の時、スプーンやフォークで食事しているお年寄りをたくさん見ました。
でもその人の意志があり、諦めなければ願いは叶うという事をげんじゅうさんに教えてもらいました。
私は22才という年で、また今年学校へ行こうと受験するのですが、途中諦めそうになったり、面倒くさくなったり、やめちゃおっかな‥と、考えた事もありました。
しかし、げんじゅうさんが言ってくれています。
「諦めたらそこで試合終了だよ」
あっ。
てか諦めるも何も試験明日だ。
もっと早くにげんじゅうさんに出会いたかったです。