十月九日、長野県南牧村の別荘地で、沖縄県出身のニューハーフ、徳原マイケルウイリアムさん(37)の白骨化した遺体が見つかった事件。腕に彫られた人魚の刺青が身元判明につながったという。
「人魚は人と魚の“ハーフ”だから、ニューハーフ界では象徴的な意味がある。それに彼女は米軍人の父と日本人の母とのハーフだったから、人魚に特別な思い入れがあったのでしょう」(友人)
周囲に「子供の頃からスカートをはきたかった」と語っていた徳原さん。十三年前、都内の風俗店Aで働いていたときの元同僚が語る。
「ニーナ(当時の源氏名)はカチカチのシリコンを胸に入れていたけど、それ以外はノー整形でした。人なつっこくて、先輩からもかわいがられ、人気もあった。テレビ番組やAVにも出演していました」
当時の給料は月七十万円以上だったが、自身の体を売るのは苦手だったようだ。
「当時の彼氏が風俗を嫌がったので、ゲイバーで働こうとした。でも、トークが苦手ですぐクビになり、他に仕事もないから結局風俗に逆戻り。しばらくして、その彼氏とも別れてしまった」(知人)
その後、店を転々としながら金を溜め、タイで念願の性転換手術を行う。顔や尻も整形し、再び胸を入れ直し、一昨年、Aに出戻った。
「店ではレイと名乗っていました。よく鏡を見ながら『私キレイ!!』って叫んでた。太っているのを気にしていて、ウオーキングしたり、次にどこを整形しようかいつも考えていた。恋も多く、二カ月おきに彼氏が替わる。クラブやバー、出会い系サイトで男を探していた」(別の元同僚)
だが、お客からの人気はイマイチ。給料は月に二十万円前後に激減し、生活は荒れていった。昨年九月、池袋の風俗店Rに移ってからも、
「お店にほとんど来なかった。睡眠薬や精神安定剤が手放せないほど情緒不安定で、親友とも殴り合いのケンカをしていた。夏頃に大阪に行くと言っていたけど、結局行かなくて、その頃から連絡が取れなくなった。体調が悪いだけだと思っていたんだけど……」(R時代の元同僚)
徳原さんはどんなトラブルに巻き込まれたのか。先月、Rの従業員が徳原さんの携帯にメールしたが、返信はなかったという。
(以上、週刊文春より転載)
この週刊文春の記事は脚色もあるかもしれないし短いものであるが、一人の女性化を試みた男性の生き様が明確に描かれているものだと思う。
事件については当人に問題があったと言う向きもあるだろう。だが、わたしはそうは思わない。「当人の問題」というのは被害者が“ニューハーフ”であるということと分けて考えることができない問題だとわたしには思えるからである。
女性になりたいという夢をもった男性が生きていくのは、残念ながらこの国の現状では非常に過酷なものであると言わざるを得ない。
親や世間の理解を得るのは難しく、整形や性転換手術に伴うリスクも存在するし、何よりも仕事を見つけるのが難しい。
わたしが以前書いたように“ニューハーフの仕事”などというものは飲食店か風俗店しかないのが実際のところだ。そしてその仕事の内容も決して楽なものではない。
さらには、そうした店舗もごく僅かしかない。
わたしのようにニューハーフ業界の周辺にいる者からすれば、この週刊文春の記事のなかで触れられている上野のAとか池袋のRなどと匿名で書かれても店舗の具体名が手に取るように分かってしまうのである。
それくらい“ニューハーフ”として生きるということは選択肢が限定されているのだ。
事件の全貌についてのワイドショー的な興味はない。
あるトランスジェンダーの凄惨な死を見つめることで、逆にわたしたちトランスジェンダーが生きていることの実感を得、わたしたちが少しでも生きやすい世の中になるように行動していくことが死者に対する敬虔な態度だとわたしは信じている。