芋煮会 呼称の分類

 

 

「芋煮」にあたる呼称には地域差があり、同じ名称でも作られる料理が異なる例が見られる。すなわち、呼称と料理は必ずしも一致しない。 



「芋煮」(芋煮汁)、および、会合を指す「芋煮会」の使用範囲は、 南東北宮城県山形県福島県を中心に、新潟県関東地方でも例が見られる。ただし、このような風習や会合を示す名称としてマスメディアを通じてデファクトスタンダード化してしまったため、上記以外でも使用されている。そのため、旧来からの名称の使用範囲を特定するのは困難になっている。



「芋の子」(芋の子汁)、および、会合を指す「芋の子会」(年配者は「芋の子食い」)は、栗駒山の周辺、すなわち、北東にある岩手県北上盆地、北西にある秋田県横手盆地南部、南西にある山形県新庄盆地(最上地方)、南東にある宮城県大崎地方の一部に分布している。



「きのこ山」は、会合の名称も「きのこ山」であり、福島県会津地方に分布している。江戸時代より、秋の収穫祭としてキノコ・里芋・大根等が入る鍋を囲む習慣があり、その鍋料理を「きのこ山」と呼ぶ。現状では、キノコが入ってなくとも「きのこ山」と呼ぶ。



なお、秋田県の秋の鍋料理は、里芋よりもきりたんぽあるいはだまこもちがメインになっているため、里芋が入っているかどうかに関係なく「鍋っこ」と呼ばれている。遠足に付随して野外で集団でこれを囲む行事は「なべっこ遠足」と呼ばれ、小中高校において学校行事になっている場合もある。これらが芋煮会の一種と見なせるかは議論があるが、里芋が入っていない例があるとは言え、秋に野外で集団で囲む鍋料理としての共通性はある。



因みに現代では、秋に野外で集団で鍋料理を囲む風習が廃れつつあり、秋田県では小学校201校のうち、現在も「なべっこ遠足」を実施しているのは15校(全体の7.5%)のみである。岩手県では、県内で有名な里芋の品種を用いて芋煮・芋の子を作って家庭内で食べることには執着しても、野外で集団で里芋の鍋を囲むかどうかを重視しない傾向もある。宮城県では集団で食する秋の料理としてはらこ飯仙台せり鍋が急成長しており、芋煮会と競合している。はらこ飯と仙台せり鍋側は店で供される一方、芋煮会は準備や後始末に手間がかかるため、芋煮会サイトを運営する後者側としては準備と後始末をしなくてもいいフリープランを提供している。旧住民のこのような変化により、上記の名称は新住民には浸透しづらくなっている。