多宝塔 形式


法華経」見宝塔品第十一自体には、多宝塔(宝塔)の形式は記載されておらず、現在日本で見られるような多宝塔(宝塔)の形式については、日本独自のものといわれている。中国や古代日本で多宝如来・釈迦如来を安置する塔には五重や三重の塔があったと考えられている。


多宝塔

現代の寺院建築用語では初重平面が方形、二重平面が円形の二層塔を多宝塔と称するが、さらに狭義には初重が方三間(1辺に柱が4本立ち柱間が3間あるの意)のものを多宝塔と称し、方五間のものを「大塔」と称する。天台系には初重・二重とも平面方形の二重塔があるがこれは単に「二重塔」と呼称している。多宝塔の初重内部は須弥壇(しゅみだん)を設け、仏像を安置するのが原則で、石山寺多宝塔のように大日如来を本尊として安置する例が多い。


宝塔

「宝塔」は歴史的用語としては「塔」の美称であり、特定の建築形式を指すものではないが、現代の寺院建築用語では、円筒形の塔身に宝形造(四角錐形)の屋根を載せた形の塔を「宝塔」と呼ぶ。この形式の「宝塔」は徳川将軍家の霊廟(れいびょう、先祖や偉人などの霊を祀る宮)などにも用いられ、銅製や石造のものをしばしば見るが、木造の塔でこの形式のものは少ない。このような平面円形の「宝塔」形式の塔に庇を設けたものが多宝塔の原型とされている。多宝塔では初重と二重の間に「亀腹」(かめばら)と称する漆喰塗りの円形部分があり、円筒形の塔身の名残りを見せている。ただし、円筒形に見えるのは外観のみで、構造的には四角い初重の上に平面円形の上層部を乗せたものである。2010年(平成22年)木造で大型の宝塔形式による、池上本門寺(いけがみほんもんじ)宝塔が重要文化財に指定された。