日本における火葬



現在

離島や山間部の住民を除いてほとんど全ての遺体は火葬される。その理由としては以下の点が挙げられる。

§ 公衆衛生の観点から土葬(どそう)よりも衛生的であり、伝染病等で死んだ場合はもちろんだが、通常の死亡原因による埋葬であっても、土中の微生物による腐敗では、埋葬地周辺域に長期に亘って腐敗菌が残存するため、衛生上広域な土地を必要とする。

§ 無宗教である人が多く、埋葬の方法にこだわりがない。現代の日本では、火葬がごく普遍的なものとなっており、世間体にも無難なものとして受け入れられる。

§ 仏教では、仏陀の故事にちなんで火葬が尊ばれており、特に浄土真宗などでは火葬を強く推進してきたという経緯があった。

§ 都市に人口が集中しており、その都市部では土葬で埋葬するために必要な土地が確保することができない。

§ 墓はイエを単位として考える人が多い。そのため、先祖と同じ墓に入れるようにするため火葬する。



しかし日本においても火葬を忌む場合はある

§ 神道家の一部には火葬を仏教徒の残虐な葬儀法として禁忌する思想がある。

§ 琉球における洗骨葬のような地域的な文化への圧迫と受け止められる場合があるが、現在の沖縄ではほぼ火葬である。


世界的にみて、イスラームなど、火葬を禁忌とする戒律を有する文化が少なくない。近年では国内の日本人・外国人の中でムスリム(イスラム教徒)の人口が増加しており、火葬が主流の日本国内で暮らす彼らは、甲州市など全国に数箇所しかない土葬が可能な施設にあたらなければならない。





法規

日本では、墓地、埋葬等に関する法律第3条の規定により、原則として、死体(もしくは妊娠7箇月以上の胎児)は、死後(もしくは死産後)24時間以内は火葬してはならないとされている(但し、伝染病予防法で定められていた疾病による死亡の場合はこの限りでない)。また、火葬を行なう場合には、当該死体に係る死亡届等を受理した市町村長の許可が必要であり(墓地、埋葬等に関する法律第5条)、この許可を受けずに火葬した場合には、墓地、埋葬等に関する違反となるほか(「罰則」規定同法第21条)、刑法第190条「死体遺棄死体損壊罪」に問われる可能性もある。

なお、法律上で土葬など火葬以外の方法が禁じられているわけではないが、環境衛生面から行政は火葬を奨励しており、特に東京都大阪府などでは、条例土葬は禁じられている。