律(りつ)


(りつ)(梵:Vinaya, 漢:毘奈耶 )とは、仏教において僧団(サンガ)に属する出家修行者(比丘, bhikkhu, bhikshu)が守らなければならない、規則の事である。様々な律蔵が漢訳によって伝えられたが、日本においては主に四分律(しぶんりつ、しぶりつ)が用いられた。




歴史

釈迦が成道して布教活動を行って仏教教団が形成された結果、団体を維持するための規則が必要となり、釈迦の在世中はその時々に応じて釈迦が規制を定めた。ゆえに、これらの規制には「~してはならない」という禁止事項が多い。

釈迦の死後、教団の維持・発展が残された弟子たちの使命となり、迦葉(かしょう)が収集して開催された第一結集において、持律第一と称された優波離(うはり)を中心に律蔵の再編集が行われた。以降、僧侶たる者は・律・論(きょう・りつ・ろん)を全て修めることが求められるようになり、これらを全て修めた者は三蔵(さんぞう)と呼ばれた。

しかし釈尊の死後から100年後、戒律の1つの僧侶の財産の所有禁止という項目を巡って、上座部と大衆部との間で論争が起き、教団は2つに分裂した(根本分裂)。

いずれにせよ、律の条項を遵守する事は多くの部派において必修であり、僧侶と在家(ざいけ)信者を区別する最大の理由として受け継がれている。現在においてもタイスリランカの南方仏教では戒律が厳守されており、中国からベトナムにかけての大乗仏教においても概ね同様である。ただし、インドやチベットの後期密教、日本の鎌倉仏教など、戒律を大幅に変更ないし緩和する例も見られ、しばしば異端視される。