地獄(じごく、Skt:Naraka、音写:奈落)とは仏教における世界観の1つで最下層に位置する世界。欲界・冥界・六道、また十界の最下層である。一般的に、大いなる罪悪を犯した者が死後に生まれる世界とされる。
地獄は、サンスクリット語で Naraka(ナラカ)といい、奈落(ならく)と音写されるが、これが後に、演劇の舞台の下の空間である「奈落」を指して言うようになった。
六道の下位である三悪趣(三悪道とも、地獄・餓鬼・畜生)の1つに数えられる。あるいは三悪趣に修羅を加えた四悪趣の1つ、また六道から修羅を除く五悪趣(五趣)の1つである。いずれもその最下層に位置する。
日本の仏教で信じられている処に拠れば、死後、人間は三途の川を渡り、7日ごとに閻魔をはじめとする十王の7回の裁きを受け、最終的に最も罪の重いものは地獄に落とされる。地獄にはその罪の重さによって服役すべき場所が決まっており、焦熱地獄(しょうねつじごく)、極寒地獄(ごっかんじごく)、賽の河原(さいのかわら)、阿鼻地獄(あびじごく)、叫喚地獄(きょうかんじごく)などがあるという。そして服役期間を終えたものは輪廻転生によって、再びこの世界に生まれ変わるとされる。
こうした地獄の構造は、イタリアのダンテの『神曲』地獄篇に記された九圏からなる地獄界とも共通することがたびたび指摘される。たとえば、ダンテの地獄には、三途の川に相当するアケローン川が流れ、この川を渡ることで地獄に行き着くのである。
『古事記』には地獄に似ている黄泉国が登場する。ただし、『日本書紀』の中に反映されている日本神話の世界では、地獄は登場しない。代わりに恨みや果たせなかったのぞみなどを抱えたまま死んだ魂は、鬼となるといった物語は、菅原道真や今昔物語などのその例が見られるが、地獄に落ちてといったものはでてこない。
地獄の色
東アジアの仏教では、地獄の色は道教的に、あるいはその影響を受けた陰陽道的に「黒」で表す。餓鬼は赤、畜生は黄、修羅は青、この三色を混ぜると地獄の黒になると言われる。また、節分で追われる赤鬼、黄鬼、青鬼はここから来ている。