十界(じっかい)

十界(じっかい)とは、天台宗の教義において、人間の心の全ての境地を十種に分類したもので、六道に声聞・縁覚・菩薩・仏の四を付加したものである。十界論十方界あるいは十法界(じっぽうかい)とも言われる。天台教学の伝統を表した『仏祖統紀(ぶっそ とうき)50に出る。

地獄(じごくかい)餓鬼(がきかい)畜生(ちくしょうかい)修羅(しゅらかい)人界(にんがい)(てんかい)声門(しょうもんかい)縁覚(えんがくかい)菩薩(ぼさつかい)(ぶつかい)に分類され、これらの総称が十界である。


六道(ろくどう)

六道とは、主に人間の内面において繰り返される(輪廻)世界を指す。

地獄界

あらゆる恐怖に苛(さいな)まれた状態。

餓鬼界

眼前の事象に固執する餓鬼の状態。

畜生界

動物的本能のままに行動する状態。食欲睡眠欲性欲、物欲、支配欲など、欲望のままに行動する状態を指す。

修羅界

会話を持たず「武力」をもって解決を目指す状態。日常的な喧嘩から国家間の戦争に至るまでの全般を指す。

人界

平常心である状態。だが、人間的な疑心暗鬼を指すともされる。

天界

諸々の「喜び」を感じる状態。主に瞬間的な喜びを指す。

また、

§ 人間の忌むべき部分、地獄界・餓鬼界・畜生界の三種をもって三悪趣(三悪道とも)と括られる場合がある。

§ 三悪趣に「修羅界」を加え四悪趣(しあくしゅ)とされる場合もある。

§ 三悪道に対し、修羅界・人間界・天上界の三種を三善道ともいわれる。

§ 四聖(ししょう)を悟界というのに対し、六道を迷界ともいう。


四聖(ししょう)

四聖とは、天台宗において六道に付加された4つの世界を指す。寓画的な世界よりも、むしろ人間の精神状態といった意味合いが強い。この四聖を悟界(ごかい)という。

声聞界

仏法を学んでいる状態。仏法に限らず、哲学・文学・物理学、さらには大衆娯楽や子供の戯言に至るまで「学ぶ」状態を指す。

縁覚界

仏道に縁することで、自己の内面において自意識的な悟りに至った状態。仏界における「悟り」とは根本的に異なる。

菩薩界

仏の使いとして行動する状態。自己の意思はともかく「行動」そのものを指すとされる。

仏界

悟りを開いた状態。