涅槃(ねはん)

涅槃 (ねはん、サンスクリット:nirvana、パーリ語:nibbana、プラークリット:nivvana、タイ語:nipphaan)は、仏教の主要な概念の一つである。



この語のほか、泥曰(ないわつ)、泥洹(ないおん)、涅槃那(ねはんな)などとも音写される。漢訳では、滅、滅度、寂滅、寂静、不生不滅などと訳した。また、サンスクリットでは「廻って」という意味の接頭辞 pari- を冠してパリニルヴァーナ(parinirvāṇa) 、更に「偉大な」という意味の mahā- を付してマハーパリニルヴァーナ(mahāparinirvāṇa)ともいわれるところから円寂、大円寂などと訳された。ただし、南伝のパーリ語教典を訳した中村元(なかむらはじめ)はダンマパダ、第十章、「暴力」、百三十四節の訳注において「安らぎ - Nibbāna= Nirvāṇa 涅槃)声を荒らげないだけで、ニルヴァーナに達しえるのであるから、ここでいうニルヴァーナは後代の教義学者たちの言うようなうるさいものではなくて、心の安らぎ、心の平和によって得られる楽しい境地というほどの意味であろう。」としている。



涅槃は、「さとり」〔証、悟、覚〕と同じ意味であるとされる。しかし、ニルヴァーナの字義は「吹き消すこと」「吹き消した状態」であり、すなわち煩悩(ぼんのう)の火を吹き消した状態を指すのが本義である。その意味で、滅とか寂滅とか寂静と訳された。また、涅槃は如来そのものを指す。涅槃仏などはまさに、死を描写したものである。「人間の本能から起こる精神の迷いがなくなった状態」という意味で涅槃寂静といわれる。

釈迦入滅(死去)してからは、涅槃の語にさまざまな意味づけがおこなわれた。

1 有余涅槃・無余涅槃とわけるもの

2 灰身滅智、身心都滅とするもの

3 善や浄の極致とするもの

4 苦がなくなった状態とするもの


などである。