[前置き]

当ブログではイケメンシリーズのキャラの二次創作のみを載せていましたが、今回はイケメンシリーズ外の二次創作となります。

ご承知ください。

株式会社coly様から配信されている「ドラッグ王子とマトリ姫」及び「スタンドマイヒーローズ!」のキャラの二次創作です。

それではどうぞ。








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額にひんやりとした感触を覚えて、ぼんやりと意識を覚醒させる。


(あれ?私…)


「あ、起きた?大丈夫?」


「わ、渡部さん?!」


枕元にはさっきまでなかったはずの恋人の姿。


驚いて勢いよく起き上がったけれど、くらっと目眩がして思わず頭を抑えた。


「こら、大人しくしてなきゃダメ」


渡部さんがそう言って私をベッドに押し戻して、私の額に濡れタオルを乗せる。


「あ、すみません、おかえりなさい…あの、一体何がなんだか…」


思考が追いつかなくて、しどろもどろな言葉しか出てこない。


「んー?帰ってきたら風邪ひきのお姫様が寝てたから、俺が看病してあげようと思って」


言いながら渡部さんが枕元に置いてあった体温計を振ってみせた。


「え、私熱ありました?」


(なんとなーく体調悪い気はしてたんだけど…っていうかいつの間に寝ちゃってたんだろう…)


渡部さんの家に先に帰ってきて、片付けをして、ご飯の準備をしようとして、でも少し具合が悪くて…記憶はそこで途切れていた。


きっと渡部さんがベッドまで運んでくれたのだろう。


そう考えると一気に後悔に襲われた。


「うん。37.7度」


渡部さんがことも何気に頷く。


「ごめんなさい、帰ってきて早々ご迷惑をおかけしてしまって…」


きっと忙しい合間を縫って無理に帰ってきてくれたのに。


(ほんとタイミング悪いな…)


申し訳ない気持ちでいっぱいになって思わず目を伏せると、渡部さんが小さく笑う気配がした。


「なんで謝るの。可愛い恋人の看病させてもらえるのが迷惑なわけないだろ?」


それに、と言いながら渡部さんが私の頬にそっと手を伸ばして、優しく撫でる。


「玲ちゃんいつも強がって俺に甘えてくれないから。風邪ひいてるくらいの方が労わってあげやすいでしょ?」


渡部さんは冗談めかしてそう言うけれど、その奥にある優しさをしっかり感じて、貰った言葉がすとんと胸の中に収まる。


いつも無理してるのは渡部さんの方じゃないですか、とか、看病するのを喜ぶなんて変わった人ですね、とか、いつもみたいな可愛げのない返しならいくらでも思いついたけれど。


「…ありがとうございます。渡部さんがいてくれてよかった…」


身体が弱っているせいか、いつもより素直な言葉がするっと出てくる。


それでも何となく気恥ずかしくて、私は頬に添えられた渡部さんの手を上からきゅっと握って、そっと目線を逸らした。


「…玲ちゃん、こっち見て」


渡部さんの声に促されて、おずおずと視線を戻して見上げると――


(え…っ)


渡部さんが私の口元を掌でそっと塞いで、その上から自分の唇を重ねる。


微かな水音をたてて唇が離されれば、間近で視線が絡み合った。


「わ、渡部さん…」


「ほんとはキスして『俺に移せよ』って言いたいところなんだけど…さすがに帰ってきて早々お仕事放棄したら怒られちゃうから」


ごめんね、と呟きながら渡部さんが私の唇を指先で優しくなぞる。


「そんなこと…」


渡部さんの言葉に、私は思わず繋いだままの手をぎゅっと握りしめた。


「そんなこと、いいんですよ。こうやって渡部さんが側にいてくれるだけで、こんなに嬉しいのに」


そう言って微笑むと、今度は渡部さんが少しばつが悪そうに視線を逸らす。


「あー…玲ちゃん、それ無自覚?」


「え?」


「治るまで何もできないんだから、軽々しくそういうこと言わないの」


そう言うと、渡部さんが私の額に触れるだけのキスを落とす。


「渡部さん…」


「欲張りでごめんね」


渡部さんが優しく囁く。


(欲張りなんて…私だって久しぶりに渡部さんの顔見ると欲しいと思っちゃうのに)


それを言葉にするのはやっぱりちょっと恥ずかしくて、私は黙って小さく首を横に振った。


「はぁ…俺のお姫様はほんと可愛いねー。
…あっそうだ、玲ちゃん、さっきお粥作ったんだけど食べられそう?」

渡部さんがいつもの調子に戻って言う。


「え、渡部さんが作ったお粥!食べます!!」


つい勢い込んで答えると、渡部さんが耐えきれないというようにぶはっと笑った。


「あっはは、さすが色気も食い気もある美女だね」


「それ、褒めてます?」


「褒めてる褒めてる」


「もう…」


渡部さんはひとしきり笑った後、私の頭をそっとぽんぽんと撫でる。


「元気そうでよかった」


「あ…」


そのほっとしたような、優しい笑顔に胸が甘く締め付けられた。


「ありがとうございます。渡部さんのお陰です」


「それはよかった。朝一で飛行機乗って帰ってきた甲斐があったなー。じゃあお粥用意してくるから、ちょっと待ってて」


そう言って最後に私の髪を梳くように一撫でしてから立ち上がる。


私はベッドの中から愛しい恋人の背中を見つめて、この上なく贅沢で幸せな心地に包まれながらそっと目を閉じた――。



--------end--------







-あとがき- 


こんにちは、ちゃなです。


お久しぶりSSは初のマトリでした(笑)


もちろん相変わらずイケシリもやってます。もう少し落ち着いたらまたSS詰め載せますね。


本当はpixivでたくさん反応頂いた樹さんSS載せようと思ったのですが、アメブロに年齢指定付きが載せられないことを思い出し…(笑)


そんなわけで渡部さんの看病ネタです。笑


樹さんSSはぜひこちらへどうぞ。


リクエスト随時受け付けてますのでお気軽に。書くのはとっても亀さんスピードですが…


そしてそして、イケシリオンリーのブログでなくすにあたり、ブログ名を変更致しました。


が、中身は今まで通りちゃながイケメンについて色々書いていきますので笑、なにとぞお見知り置きください。よろしくお願いします。


リアルではお仕事やら勉強やらに追われる日々なので、イケメンに癒されつつ頑張っていこうかなぁという感じです。


最近とっても寒いので皆様もどうぞお体ご自愛くださいね。

ちゃな。