『しばらく依頼の調査で留守にする。俺がいない間は、できる限り教会には近づくな。片付いたら会いに行ってやるから大人しく待ってろ。くれぐれも俺のいないところでちょろちょろ出歩くな。』
そんな手紙がクリスさんから届いたのが、三日前のこと。
(どうしてるかな…危険なことしていなければいいけど)
待っていることしかできないもどかしさを感じながら、バルコニーに出てぼんやりと月を眺める。
と、その時、バルコニーのすぐ側の木ががさがさっと音を立てた。
(な、何…?)
思わず目を伏せて後ずさった、次の瞬間。
「来てみたらもう外で待ち構えてるとは、お前は主人の帰りを待つペットか何かなのか」
目の前に人が降り立つ気配がしたかと思うと、頭上から聞き慣れた声が降ってくる。
「えっ…ク、クリスさん?!」
私はぱっと顔を上げて目を見開いた。
「…お仕事もう終わったんですか?」
「いや、まだだ。だからでかい声を出すな」
クリスさんは低い声で囁くと、私の腕をひいて抱き寄せる。
「それならどうして…」
私が首を傾げると、クリスさんがばつが悪そうに視線を逸らしながら言った。
「俺を何だと思ってるんだ。心配してるだろう恋人をいつまでも放って依頼にかまけていられるほどの理性は、生憎だが持ち合わせてない」
「クリスさん…」
私が思わず顔を綻ばせるけれど、はっと仕事のことを思い出す。
「あの、依頼っていうのは…?まさか、また危険なことに巻き込まれてるんじゃ…」
すると、クリスさんが私の言葉を遮るように、頬をむにっとつねった。
「い、いひゃいでふ…っ」
「痛くしてるからな」
クリスさんがにやりと意地悪な笑みを浮かべる。
それから手を離して、そのまま私の頬をそっと撫でながら口を開いた。
「別に危険でもないから安心しろ。お前を悲しませるようなことはもうしない」
「クリスさん…」
思わずクリスさんの方へ手を伸ばそうとすると、その手を途中でぱしっと掴まれる。
「え…」
すると、クリスさんが眉根を寄せて微かに頬を染めると言った。
「…そんな顔をするな。帰りづらくなるだろ」
「えっ…ク、クリスさ、んっ…」
次の瞬間、言葉を封じるように唇に噛み付くようなキスが落ちてくる。
「ぁ…んん…っ」
やんわりと食まれて深くまで求められるうちに、勝手に甘い吐息が零れ出す。
「っ、はぁ…」
唇が離れた時には、私の体からはすっかり力が抜けてしまっていた。
乱れた呼吸のまま見上げれば、どこか危険な熱を孕んだクリスさんの瞳と目が合う。
クリスさんはそのまま私の濡れた唇をなぞり、にやりとして囁いた。
「すぐ終わらせて戻ってくる。次会った時は頭から食ってやるから覚悟しとけ」
「…っ」
意地悪なのに甘い響きを含んだ囁きに、私は熱に浮かされたように頷いて、クリスさんの体をぎゅっと抱きしめる。
いつの間にか私の心からは寂しさも心配もかき消えていた――。
--------end--------
-あとがき-
5/14のワンライのお題でした~。
クリスさんで!何気あんまり書かないキャラだけど、本編のストーリーがめっちゃ好きです。
ツンデレっぽい優しいとこも結構好みだったり。
バルコニーから入ってくるシチュをどうしても書きたかった…(笑)
ロミジュリ感出ますよね。笑
ちゃな。