五月晴れの空の下、にぎやかな声援が響く。
そう、今日は小学校の運動会。
(うーん、悔しいなぁ…)
先ほど出場した徒競走で、私は惜しくも2位だった。
応援席に戻ると、さっそくいじめっ子の誠二くんがつかつかと歩み寄ってくる。
「おい紗久良、なに抜かされてんだよ」
「ご、ごめん…」
「おー、反省しろ。次の競技でヘマしたら梅干しの刑な」
「っ、それは嫌!」
「ご主人様に口答えすんな。しょうがねーから俺が挽回してやるよ」
誠二くんはそう言うと、次の競技に出るための列に走っていった。
(悔しいけど…誠二くん、足すっごく速いしかっこいいんだよね…)
ぼんやりそんなことを考えてしまって、私は慌てて首を横に振る。
(だ、だめだめ!誠二くんがかっこいいなんて、私何考えてるんだろう)
はぁっとため息を付きながら応援席に座ろうとした、その時。
「きゃっ」
通りすがりの上級生の男子にどんっとぶつかられて、弾みでよろけてしまう。
と、その時ぶわっと強い風が吹いて――
(えっ…)
近くにあったテントが倒れて、転んだ私の頭上に落ちてくる。
慌てて起き上がろうとしたけれど、
(ど、どうしよう、ぶつかるっ…!)
痛みを覚悟して顔を伏せた瞬間、何か違うものが覆いかぶさってきた気配がして――
ガシャンッ…――
(痛…くない…?)
覚悟していた痛みは感じず、代わりに唇に柔らかい感触を感じる。
恐る恐る目を開けると、そこには…
(せ、誠二くんっ?!)
思わず目を見開くと、私を庇うように被さっている誠二くんとばっちり目が合った。
誠二くんは慌てたように体を離すと、ぱっとそっぽを向く。
「わ、悪い…怪我、してねえか?」
「だ、大丈夫っ…ありが、とう…」
「…おー」
(っていうかさっき………キス、しちゃったよね…?)
冷静になって先ほどのことを思い出せば、みるみるうちに羞恥に襲われる。
ふと隣を盗み見ると、誠二くんの顔もこれまでに見たことがないくらい真っ赤になっていた。
(どうしようっ…恥ずかしすぎる…!)
「ばっ…赤くなってんじゃねーよ!」
「誠二くんこそ…っ!」
お互いに顔を背けたまま言い合う。
と、そこにテントが倒れたのを見て、何人かの先生が駆けつけてきた。
「大丈夫だった?!危ないわね、このテント」
「大丈夫です。おい、そろそろ戻るぞ」
先生に向かって愛想よく答えてから、誠二くんが私の腕を引いて、そのまま手首を無造作に掴むと歩き出す。
(相手はいじめっ子の誠二くんなのに…なんでこんなにドキドキしてるんだろう)
唇に触れてみれば、まだほんのりと熱が残っているような気がする。
少し先を歩く誠二くんの赤く染まったままの横顔を見つめながら、私は気づかれないようにこっそりため息をついた――。
--------end--------
-あとがき-
誠二くん姫ちゃんの小学校時代のお話でした~。
多分小5くらいの設定です。
昔の誠二くんは姫ちゃん好きなのに素直になれないいじめっ子だった(ら美味しい)と思ってるので笑、いざとなったら必死で助けに来てくれると思うんですよ。まあそういう誠二くんを書きたいがために姫ちゃんをひどい目に遭わせてしまうんですけどね、ごめんね姫ちゃん。笑
事故ちゅーしちゃったら絶対2人ともめっちゃ照れる!可愛すぎる!って思って書きたくて…笑
はい。何言ってるかわからなくなりましたが、とりあえずショタ誠二くんとロリ姫ちゃん話好きだなと。安定の可愛さです。自己満作品でごめんなさい…笑
そろそろ眠りキャラ以外も書こうかな。
そろそろリアルが落ち着きそうなので、また色々書きたいです。
ちゃな。