山本 文緒
プラナリア

この本、すごく面白かった。

帯の「働かないって、いけないこと?」という文字に惹かれるものがあったのだろうし、それ以上に他愛もない日常が何となくリアルに書かれていると、他人の心の中や生活を覗き見しているような気分になり、うしろめたい気分を覚えながら、何となく読んでしまった。


小説を読んでいて「うしろめたい」という言い方はすごく変なのだけど、飲み屋に入ってたまたま知らない人たちの会話を聞かないふりをしながら聴いているときのようなうしろめたさ。知りたくはないが、どうしても知りたくなってしまう。


たとえば、乳がんの女の子の話やご主人がリストラになった奥さんの話。収入もない彼氏からプロポーズされた女性の話。どこにでもあるような話でもあり、それでいていつわが身にふりかかってもおかしくないような話。そういう人たちが何を考え、どうやって生活しているのか、興味がなくてもつい知りたくなってしまう。


不幸自慢の羅列のような気がしなくもないが、それぞれの主人公が淡々としているのがやけに印象に残った。