死ネタです。
嫌いな方はスルーでお願いします。
高く高く太陽が昇りきって、青い空がどこまでも続いていく。
ねぇ…先輩。
見えますか?
アンタが望んだ空は、ここにあるよ。
―sky―
「先輩、入るよ。」
「いい度胸だね…越前。先輩の部屋に許可なく入るなんて。」
「別にアンタの部屋ではないでしょ。英二先輩、これ…。」
「お、お前にしちゃ珍しいじゃん、ぜんっぜん似合わねー!」
「母さんが持っていけって。」
「…あ、そ。」
先輩がいる、四角い真っ白な部屋は、まるで縛り付けるための檻のよう。
何の変化もない、何にも染まらないその部屋で、毎日を過ごす先輩は、〝その日〟が必ず訪れることを人知れず分かっていたのかもしれない。
だからこそ、我が儘を言い、俺に触れ、優しく笑っていた。
「おチビちゃん、おいで。」
「なんすか…っ、」
「大好きだよ…。」
首に感じる、先輩の体温。
それは唇に触れ、肩に感じた。
「…英二、先輩…?」
「ほら、今日はバイバイ。部活の帰りなんだろ?疲れてんだからさっさと帰って休め。また明日ね。」
「先…!」
有無を言わさぬように追い返された。
俺の為、俺の人生の為と、あなたは言うけれど、あなた自身が俺の人生。
あなたが描く、運命をも跳ね返すその生き様が、俺そのものなんだ。
生きたいって思う事は罪なのだろうか?
死にたいと望む事は禁忌に値する。
だったら、生きたいって願えども、死にたいって望めど、生きる事も死ぬ事も奪われたらどうすればいいのだろう?
「越前かい?」
ほとんど無意識に取った電話から、聞こえるのはあの人の親友。
「…俺しかいないでしょ、不二先輩。」
「…クス、そうだね。そんなことより…越前。落ち着いて聞いて。」
「……はい?」
無我夢中で走る…なんて、そんな漫画みたいなこと出来なくて、受話器を落としたのも気付かないくらいに時間が止まった。
何故、どうして。
何で俺は、傍に居ない?
あの人が苦しんでいるのに、家で普通に生活して、笑って。
苦しみの共有は、出来やしない。
あの人はそんなこと望んじゃいない。
解りきっていることのはずなのに、後悔ばかりが浮かんでくる。
「――…不二先輩っ!…あ…――」
「……越前…。」
白い布から見える、赤茶色の髪、大好きな顔は布に隠れて見えないけれど、愛しい人。
「先…ぱ…?」
「…最後まで…最後まで、君のことを想っていたんだよ。」
「ど…し、どうして…何で、先輩がっ!治るって、治るって言ったんでしょ?何で、英二先輩が死ななくちゃいけないんすか!!」
「…治る…なんて、なかったんだ…確かに、外国に行けば治ったかもしれない。だけど英二は、君の居る日本を選んだ…。」
大切だから、傍に居たい。
あの子は、俺が傍に居ないとすぐ挫折するんだから。
――…なんて、本当は俺があの子の傍に居たいだけなんだけどね。
「英二…先輩…、英二っ…。」
すがりつくようにあなたを呼ぶ声は、あなたに届くことはなかった。
俺を包んでくれた暖かい手は、氷のように冷たい。
月日は流れても、英二先輩は俺の中で永遠に生きている。
生きて、いく――…。
「やぁ、越前。久しぶりだね。」
「ほんとっすね、不二先輩。英二先輩の葬式以来だから…三年ぶりっすか?」
「…そうだね。あれ以来、姿見せなかったからね、君。」
「…すんません。だけど今日…ようやく英二先輩に逢いに来れました。」
「うん、英二も喜んでるよ。じゃあね、ごゆっくり。」
目の前に広がるのは、名前を彫られた石の塊。
ここに来るのは恐くて、あの人を失った恐怖がまた溢れそうで、認めてしまいそうで、だけどそれでもあなたの命日に、あなたに最後に逢った、この日に――…。
「…久しぶりっす英二先輩。今日は報告があります。俺…アメリカに行きます。いつ戻れるか分からないけど…。」
空は高く、どこまでも澄みきって。
きっと、続いていく。
あなたと見上げた空は果てしなく遠く、ひとりで見上げる空は切ない。
いつの日か、また同じ空を見上げる時がくるように。
いつの日か、高く澄みきった空の元、あなたに触れられますように…。
…初?
リョ菊死ネタです。
英二の病気はあなたの想像にお任せします。
まだ未成年で、好きな人の傍に居たいから…なんて、思えるのか解りませんが…やっぱりリョ菊にはこの人あり!という風にでしゃばる不二先輩。
英二思いな不二先輩、大好きです。
最初はこの、三年後のリョーマ語りとなってます。
きっと英二は、「空」についてリョーマに語ったのでしょう。
三年後のリョーマは、きっと大人っぽくなってくれてるはず(笑)