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カレンダーもあっという間にその2枚目がめくられてしまったこの頃。ちょっと待ってよ~ついこの間、お年始のご挨拶をしたばかりじゃないのさ!まったくもって時の流れは早いものでゴザイマスよね。それこそ我のムスメにおける成長をずっと見つめ続け、結婚式当日にその父親が目頭を熱くしながらひしひしと実感する時の流れ…ソレにも似ているような気がするのでありまする…ってソコまで大きな話ではないけれど。(笑)
父親と言えば、70&80年代のアイドルポップスでも、ソレをタイトルに宛がった作品がいくつかあったもの。例えば…

「DADDY」 堀川まゆみ
「パパはもうれつ」 しのづかまゆみ
「パパキケン!」 ザ・リリーズ
「父さん」 祐子と弥生
「父ちゃんどこさ行った」 奈良寮子

と…それら呼び名はケンミン性によりさまざまなようだけど、まぁ、色々なチューンが存在したものでゴザイマスよね。でもって今回取り上げるこの曲も…実はソレ関連だったりで。
というワケで今回のレビューはあの方が放ったこの‘パパウタ’をお送りしたいと思うのでありまする。

表題の「パパが私を愛してる」は中山圭子さんのデビュー曲として、1980年2月1日に発売された楽曲である。中山圭子さんと言えば、俳優の佐竹明夫さんが実父であり、それが縁で「オールスター家族対抗歌合戦」に出場。その大会で優勝したことにより俳優さんの娘で小学生、しかもキュートなビジュアルを備えた圭子さん(当時は本名の圭以子表記)に一気に脚光が集まることになったのである。なんでもその番組に出演してからはプロダクションからレコ会社まで、いわゆる業界さん達からスカウトの電話がひっきりなしだったそうな。最初こそは反対していたお父様もそのチャンスを生かすべきなのではないか?といった考え方に変わっていったらしい。でもってサンミュージックに所属が決まった圭子さんは、ティーンの段階で雑誌モデルや映画の主題歌など…学業に差しさわりがない程度の芸能活動を始めることになったようである。その時に吹き込んだ映画の主題歌とやらが…

「そよ風のベンジー」

そう、要はとあるワンちゃんの活躍を描いたファミリー向け映画として、70年代に人気を博したあの人気作品である。なので圭子さんはこの時点でレコードデビューはすでに飾っていた…ということになる。ただしコレは俗に言う‘プレデビュー’という扱いのもので、本デビューはあくまでも1980年2月1日というのが公式上での記録になっているのである。

さて、そんな圭子さんの本デビュー曲「パパが私を愛してる」は作詞を阿木燿子さんが、作曲を南こうせつ氏が手がけたもの。注目すべきはなんといっても作曲を担当された南こうせつ氏だろうか。彼は「売れないとかわいそうだから」という理由から他人様への楽曲提供はあまり積極的には行ってこなかった方である。実際に彼が手がけたアイドルポップスを思い出してみても…

「雨音に口づけを」 榊原郁恵
「少女人形」
「もう一度逢えますか」 以上、伊藤つかさ

と…少なめ。アルバム曲では柏原芳恵さん、小泉今日子さん、そして富田靖子さんなどの作品でクレジットが見られるものの、シングル盤となるとその数は極少…ということになっているのである。そんな彼をクドいて楽曲を書かせてしまったのだもの…当時のサンミュージックが中山圭子という少女にどんだけの期待を抱いていたか…ソレが物語るようなエピとも言えるだろうか。

このようなコンビにより生み出されたこのチューン…そのタイトル+阿木センセイ作詞という事実を踏まえて考慮すると、なんだかドキっ!っとさせられるような内容のソレなのかと、勘違いする人もいることだろう。なんせ阿木センセイはそのテの‘ドキウタ’をタイヘンお得意とされていた方だものネ。でも圭子さんのデビュー曲はそうした受けて側の思惑をハラリとくつがえす、実にほのぼのとした情景を描くファミリーソングなの。それこそ父とムスメの絆を家族愛として美しく描写した作品に仕上げられてアいるのである。だからこのタイトルから‘よからぬお事柄’を想像するのは…ご法度なのでゴザイマス。

♪Daddy Loves Me
 あなたの写真さかさまにして
 誰かとくちづけをするその日まで
 Daddy Loves Me
 あなたは恋人 私の恋人

ここで使われている「LOVE」は父への愛情を示すソレである。おそらくはこうした歌い出しが当時も現在も誤解を産む原因になってるのかしらん。だって、この曲に関するネット上の記事などを読んでみると必ずといっていいほど‘ソレ’についての記述を見かけたりするもの…コレはちょっと困りものである。たしかにニッポンにおいて「LOVE」というお言葉は、なんだか恋人同士の専売特許みたいなモノってのがフツーのご認識。ただ、こちら英語圏でのお話となると…恋人同士はもちろんのこと、家族、友人、ペット、はたまた食べ物にまで…とにかく「ダイスキ」という愛情やキモチを現すのに多用されているソレなのである。ただニッポン人的にはやっぱりねぇ…使うのはテレるものでゴザイマスよね。現にワタクシメだってコチラでの生活を始めた当初、クリスマスカードなど貰ったりした際に〆の言葉として「LOVE」ってのが使われていたのをみるにつけ…なんとなく気恥ずかしくなったりしたもの。もちろんコチラが書く立場になるとソレはなおさらのことだったりで。かといってソレが〆として書かれてないと実に味気ないソレになってしまうらしい…コチラの方の見解によれば。LOVEってのは彼らにとっちゃ、それくらいに大切なお言葉…のようでゴザイマス。

♪そんなまぶしい目をしないで
 リップクリームは口紅じゃないわ
 そんな途中で怒鳴らないで
 長い電話も彼とは限らないの

この曲はアイドルのデビュー曲としては非常にめずらしいロッカバラードのゆったりとしたテンポを刻む曲。ロッカバラードと言えば米の50年代から60年代初頭にかけて人気を博したコニー・フランシスのヒット曲などで人気を博したリズム。しかしニッポン産のポップスに目を向けてみても…

「サマーホリデー」 河合美智子
「抱いてくれたらいいのに」 工藤静香
「サマーセイリング」 相本久美子
「ときめいて」 姫乃樹リカ
「ロンサムシーズン」 岡田有希子/中嶋美智代
「ボビーに片想い」 手塚さとみ/新田恵利
「涙のスウィート・チェリー」 ラッツ&スター
「お前がパラダイス」
「渚のラブレター」 以上、沢田研二
「グッバイ・マイラブ」
「リンダ」 以上、アン・ルイス
「けんかをやめて」 河合奈保子
「何もきかないで」 荒井由実
「Only My Love」 松田聖子
「DIARY」
「サムシングサムバディ」 以上、須藤薫

などなど…そうそうたるお顔ぶれになるの。おそらくはロッカバラード独特の切ないメロが日本人の胸をキュンキュン!させまくるんだろうか。それこそこのリズムの本場だった(?)とおぼしきアメリカのお方々よりよっぽどピッタリコンコンで彼等よりもこのリズムに...

LOVE

したのは我等ニッポン人だったのでは?なんて思うほど…このリズムはニッポン産ポップス分野において繰り返し幾度となく使われ、日本人リスナーたちのアソコをコチョコチョとくすぐり続けてきたのである。
ロッカバラードの魅力と言えばやはりそのメロにあるのは言うまでもない。

♪Daddy Loves Me
 優しく髪を洗ってくれた
 あの日は遠い 遠いけれど
 Daddy Loves Me
 あなたは恋人 私の恋人

セピア色した色調の絵柄がふとまぶたに浮かんでくるような…実に切なくて甘美なソレ。イントロや間奏で使用されているギターの泣きも非常に胸を打つのである。それこそ2月という季節独特の風情を醸し出したソレとなっていたりで。春はまだ少し遠いけど、窓越しにみる寒い季節の景色を眺めながら聴いていたい…そんな1曲なのである。しかもデビュー曲でこのバラード調の難しい楽曲を歌いこなしている圭子さんもアッパレに値するだろう。ここらあたりにもサンミュが是が非でも中山圭子という女の子を欲しがった理由…コレが見えてくる、要は社のこだわりでもあったのか。↑に掲げたレコジャケも実に可愛らしく撮れていて…デビュー曲のレコジャケとしては申し分ない出来栄えである。

しかしながら圭子さんを売るためのプロジェクトは事実上失敗に終わった。実際、この楽曲はオリコンの100位以内へのチャートインを逃している。この失敗に関する詳細はご本人様のホムペにも記述があるので、ここではあえて書かないけれども。↑の節を見て分るとおり、この楽曲はとあるシャンプーのコマソンとタイアップが付けられ、圭子さんのデビューとともにお茶の間でガンガンに流れるハズ…だったのである。だからこそあえてこの設定を選び、そうした情景を歌詞に組み込んだ阿木センセイ…なのになのにそのご努力は商品の販売中止という形により、全くもって報われなかったようでゴザイマス。この背景には80年代アイドル界における女王の座に君臨したあの方も絡んでいる。かといって別に彼女がなにかをしでかしたワケでもなんでもない。要は運命のいたずらにより形成が一気に逆転…当初イチオシだった圭子さんはコマーシャルのオンエア中止はおろか、新人賞レースすら強制的に辞退させられるハメに。一方、のちの女王は圭子さんデビューにより歌手としての船出は先の先まで見送られていたものの…この予期せぬリタイヤ劇により白羽の矢を射止めたのである。その後の状況はコレを読んでる皆様も充分にご存知のとおり…白羽を射止めた少女はスターダムを一気に駆け上がっていくことになったのである。

この交代劇は何度読んでも胸が痛む思いをさせられる。渦中にいた少女二人にはなんの落ち度も責任もないからである。

♪あの日は遠い 遠いけれど

そう...もうかれこれ29年も前の話しになるというのに。

神の手により整然とならべられた人生のどんぐり。それらは人それぞれに設定され、当然のことながらその長さや配列もひとつとして同じものは存在しない。

お気に入りのマンガ「悪魔(デイモス)の花嫁」(画:あしべゆうほ、原作:池田悦子)にもこの状況を描いたエピソードがあったもの。

整然と並べられたどんぐり…ソレラがとある天使の出来心により、1つ2つと抜き取られてしまう。すきまができてしまったどんぐりは、それまでの安定なぞすっかり失いグラグラ。そして元の配列を大きく狂わせてしまうドドドドのドミノ倒しがはじまるのである!

まさにこれこそが二人の少女における運命が大きく塗り替えられてしまった‘その瞬間’だったのかもしれない。

☆作品データ
作詞:阿木燿子 作曲:南こうせつ (1980年度作品・CBSソニー)