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12月と言えば…1年でイチバン慌しく忙しい月、すなわち‘師走’と呼ばれるソレである。また冬至があることから、実質的にはもっとも‘冬’を実感する月であるともいえる。筆者の場合、今はワケあって南半球に位置するオーストラリアに在住しているため、12月と言えばサンタさんも♪サーフィンボード小脇に抱え~の太陽サンサンな夏…ってな具合になってしまうもの。うん、でも今年の夏はなんかヘンだぞ!だって夏がすでに半分過ぎようとしているこの時期になっても、夏らしい夏日ってのがとんとやってこないのである。それこそ20度いくかいかないかくらいの…どんよりとした肌寒い曇り空の日々が続いており♪サマ~サマサマなんて風情は一向に感じられず、どちらかというと早くも♪バイバイサマ~といった気候に近くなっているのでゴザイマス。(笑)

ところで‘冬’と言えば、80年代アイドル達もたくさんのフユウタを放ってくれたもの。中でも特に北風ぴゅうぴゅうの‘寒さ’を聴き手に感じさせてくれるチューンってのもちらほらで。というワケで今回は独断で選ばせて頂いた‘身もココロも寒くなる’という、冬らしいこの1曲をレビュってみようと思うのでありまする。

表題の「失恋散歩道」はつちやかおりさんのシングル第3弾として、1982年12月21日に発売された楽曲である。つちやかおりさんと言えば、元シブがき隊のフックンの奥様として名の通った方でもあるのだが、彼女のアイドル歌手時代を振り返ってみると…それこそあの衝撃のデビュー曲「恋と涙の17才」をはじめとして、マイナー調で陰りのある楽曲を数多く輩出。アイドルマニア間では‘哀愁ソングの女王’などと呼ばれたりしていたもの。要は‘哀愁’を唄わせたら、彼女の右に出る者はいない!と言わしめた方…とでも補足をしておこうか。(笑)

表題曲もダメ押し!とばかりに…デビュー曲から3作続きの哀愁ソングであるが、その注目すべきは作家陣である。作詞を担当されたのは後におニャン子関連ソングで名を馳せることになる秋元康氏、そして作曲は…

長渕剛

氏なのでゴザイマス。スッ、スゴ!あの頃も彼のネームバリューはそこそこあったと記憶しているが、今となってはソレのハクはつきまくった…と思われる位置までイったかと思われ。なんせ彼が女の子アイドルに提供した楽曲は数少なく、そういった意味でもかなり貴重な1曲…ということになるのである。

そんなこの楽曲…全般的には当時の長渕氏が十八番(オハコ)とされていたフォーク調。アコースティックギターの音色をところどころに散りばめながら、冬の寒さや失恋した少女の哀しみを演出した作りとなっている。おそらくは村下孝蔵氏あたりの世界観にも相通じるようなところもあるか。ちなみに編曲を務めたのは大村雅朗氏である。

シトシトと…冬の冷たい雨が降るとある日。空を見上げても太陽などは見えるはずもなく、ただひたすらにどんよりと重いねずみ色した雨雲が空一面を覆っている。こんな情景を思い起こさせるような、寒さが身に凍みるイントロ。

♪雨色の歩道橋 あなた見かけた
 少し急ぎ足ね 誰かと待ち合わせ

なにやら歌い出しの初っ端から‘哀愁’の匂いでムセかえるこの曲。なんてったってアナタ…雨色の歩道橋から見かけた‘あの人’は、誰かと待ち合わせの急ぎ足…なんだもの。この時点で主人公様の心中は穏やかなハズもなく…暗雲がモクモクとたちこめて辺り一面を覆いつくしてしまう勢いなのでありまする。

♪濡れて瞳に重なるの 
 両手で目隠ししたあなた
 突然さよなら言うなんて
 信じていたのに

‘哀愁’が更なる追い討ちを…。怨み100年…信じきってたオンナの怨みは怖いわよ!と展開していくのか、もしかして^^;。

♪泣きたいわ 泣きそうよ
 あの頃に戻れない
 忘れた涙ひとつ 小さな胸に落ちた
 私ひとり

失恋が決定的なモノとなり、ひとりぽっちになってしまった主人公様…これまたダメ押しとばかりの‘哀愁’である。♪私ひとり~と歌い上げているところから…コレは「もう立ち直れないわ~」と言わんばかりの崖っぷち、音を立てながら脆くも崩れ落ちてゆく少女の様相を呈しているようである。(笑)

この楽曲はこのようなとことんの‘哀愁’いわば‘センチメンタリズム’を楽しむことが出来るのが特徴なのだが、筆者的には更なるおすすめと言える様な聴きドコロがある。ソレは歌の後半…2番の終わりにやってくる…

♪あなた 消えそう~

ココなのである。この箇所は‘哀愁ソングの女王’としてのかおりさんを十二分に堪能することが出来る…いわば聴き逃してはならぬぞ!といった部分。なんといってもスバラシイのがココで展開される…

かおりの泣き節

である。それこそ哀しみでいっぱいの少女を歌の中で一生懸命に表現している…そんな聴かせドコロでもあるワケだ。80年代に活躍したアイドル歌手達をザっと見渡してみても、これほどの‘泣き’を歌の中で表現できた方…そう数多くはいないはずである。しいて言えば、太陽の女王が後年になって「抱いて」を感情タップリに唄った時くらいか(←でもこちらはちと大袈裟で自己陶酔気味でゴザイマシタものねぇ)。かおりさんの場合はその‘泣き’をあくまでも自然に、そしてデビュー1年目の新人時代にやってのけてしまった…ってのが実力者の証…と言えるのか。さすがは劇団いろはに籍を置き、夜な夜な鍛えまくっていただけのことはあったようでゴザイマス。まさにこういった技量、そして持って生まれた独特の陰り声(←基本的にはお声が高くて明るっぽいのだけれども、なんだか妙な陰りを感じるのでゴザイマス)が‘哀愁ソングの女王’として君臨するに相応しい要素だったのかと思われるのである。(笑)

この曲はオリコン最高69位、1.1万枚を売り上げ100位入りを達成、新人歌手としてはそこそこのヒットへと漕ぎ着けたのである。

↑に掲げたレコジャケ…それはもう‘冬’しかありません!といった風情でムンムンなソレであり、この曲のイメージを忠実に再現したモノとなっている。それこそ、どこからどう見てもかおりさんのために誂えたチェックのお洋服…そんな風に見えるのは確か。しかしながらこのお衣装…裏話によればサイズが全然合わずに、とにかく合わせろ!とばかりに後ろっ側のあちらこちらを洗濯バサミだかなんだかで止めまくっていたそうな。公称150cmというミニミニサイズだったかおりさん…当時の担当スタイリストさんが最小サイズを見つけて宛がっても、彼女のお体にはフィットしえなかったのか、もしかして。

それこそ82年組の中じゃ、こんなにちっちゃなアイドルさんは…

♪私 ひとり~

状態でゴザイマシタよね。だけれどもその小さなお体から繰り出されるパンチのある歌声…そのギャップこそが彼女における最大の魅力でもあり…

ちっちゃな体にLサイズの歌唱力

と評された所以なのでゴザイマシタよね。

さぁ、コレを読んでる皆様もこの曲で冬の雰囲気にドップリコンコンと浸かって下さいませ♪(笑)

☆作品データ
作詞:秋元康 作曲:長渕剛(1982年度作品・東芝EMI)