珈琲とおにぎり
やっと念願だった「かもめ食堂」を鑑賞。
珈琲とおにぎりがたべたくなっちゃった。
子供のころ、母が琺瑯びきの赤いポットでコーヒーをドリップする姿が好きだった。
母の小さな楽しみは焙煎したての世界各地の豆を求めて頂くこと。
豆もごりごりと挽きたて、ポタポタとガラスポットに落ちるコーヒーを眺めながら
ブラウンシュガーをつまんで口に放り込んだっけ。
母も私も薄目が好きで、母はそのまま、私はたっぷりとブラウンシュガーを入れてくれた
弟二人はその苦い液体に興味もなく、コーヒーの時間は
私と母の語らいの時間だった。
黄色いシェードの照明の下でおとしたコーヒーが飲み干されるまでの時間は
母を独り占めできる唯一の時間だった。
普段は子供臭い私をうっとおしいと言っていたけども、
珈琲をいただく時だけは、席に着かせて相手をしてくれたっけ。
そんな大人な母も今はなんだか小さくなってしまって、
もっぱら外出時に喫茶店ですするだけになってしまったけど。
今でも母と二人でコーヒーをいただくときは、
いつもその黄色いシェードと真っ赤な琺瑯びきのポットを思い出す。
ワタシの思い出話に母が打つ相槌は決まって「そうだったっけ~?」
父は今でもそうだけど、母にべったりの依存症。
そんな父を母は「あ~うっとおしい!」と毎回いっている
なんだかんだいって仲良し夫婦の両親も些細なことから喧嘩をする
たいていは母にあしらわれている父。
すねた父の唯一の反抗手段は「やけ食い」
家の中で一番大きなラーメンどんぶりに入るだけのご飯を詰め込んで
それに醤油を回しかけて、大きいままの海苔をかぶせる。
大きな手で上から押さえつけると器用にそれをひっくり返して
ラーメンどんぶりを取り去るとさらにまた海苔。
ありったけの海苔を巻きつけて出来上がった
「まーちゃん特製ばくだんおにぎり」
具なんて存在しない。
それを一部始終を呆れて見ている私たちの前で
わしわしと食らいつく。
途中涙目になりながら、巨大な黒い物体にかじりつく父。
目はまっすぐ私たちを睨みつけているのだ。
食べ終わると自室に籠ってひたすら不貞寝。
台所に残されたのはすっかり空になった炊飯器と海苔の袋。
母はその光景をどんな気持ちで眺めていたんだろう?
いつか聞いてみよう。
