美徳のよろめき 三島由紀夫

あらすじ
優雅なヒロイン倉越夫人にとって、姦通とは異邦の珍しい宝石のようなものだったが……。魂は無垢で、聖女のごとき人妻の背徳の世界。
(amazonより抜粋)
個人的感想
おもしろさ ★★★☆☆
教養 ★★★☆☆
読みやすさ ★★★★☆
読む時間 ★★★★☆
三島由紀夫の作品がずっと読みたかったのですが、先日やっと手にすることが出来ました。
本当は別の作品が読みたかったのですが、在庫がなくてなんとなく気になったこちらの作品に。
あらすじで分かってはいましたが、人妻が不倫する話です。ただ、登場人物の容姿はほぼ描写がありません。主人公が美人かどうかはわかりませんが、体の描写(ウエストが細い、腕の毛など)はところどころあってアクセントになっているように思います。
今どき流行の、いわゆる「因果応報」の話ではないので、そういったものを期待する方にはおすすめしません。
読んでいて「三島由紀夫という人は本当に素晴らしい作家だったんだな」という思いでいっぱいになりました。
私は「不倫」に興味がないので、そういったドラマも小説も見ることはないですし、芸能人の不倫に関しても何も感じません。なぜなら、私の人生に1ミリの影響もないから。(家族に関しては嫌ですけど。)
聞いていて楽しい話でもないですし、幸い今のところはそういったことに縁がなくありがたいと思っています。そんな私ですから、いくら有名な作家の作品だからといってつまらなければすぐに読むのをやめるつもりでした。でも短時間で読み終えました。
後半はダラダラと続く不倫関係に飽きてきましたが、文章も夏目漱石や森鴎外のような固いものではないので読みやすく、またページも少ないです。
私がまず感動したのは、「不倫」を「よろめき」と表現したところです。「よろめき」…!なんと粋な表現なのでしょう。不倫の始まりは人生を狂わせると当人たちは思っていなくて、ただ「よろめいた」、そんな気持ちなのでしょう。
登場人物たちが「こんな人たちって本当にいるの?」と思わせるどこか浮世離れした人々で、生々しいものが一切ないので読んでいて不快になりません。
また、作品の始まりと終わりがとても素晴らしく(もっと言えば、章ごとに区切られた最初の文も)とても私の好みでした。
聖女のような一点の曇りもなく順調に人生を歩んできた女性に付いた「不倫」という真っ黒なシミ、という印象を受けました。
ただ、一点の曇りもなく順調に歩んできた人って実際どれくらいいるのでしょうか。
私の知り合いで「自分は今まですべて順調だった」という人が一人いますが、特別仲良くなりたいとは思いませんでした。「こちらの悩みにも共感してくれなそうだし、人の痛みが分からなそうな人だな」と思ってしまったからです。
主人公も、何もなければ他人の痛みに対して何も感じることなく過ごしていたのではないかと思います。
不倫をして、主人公が血の通った「人」になっていく…それが一般的なエッセイとは違うように思います。
不倫を肯定するつもりはありませんし登場人物にまったく共感しませんが、それが作品を高尚なものにしているように思います。実際に好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思います。
この作品が三島由紀夫の傑作であり、皆が読むべき作品かといわれるとそうではないと思いますが、興味のある方は是非読んでいただきたいです。
このブログは個人的な感想をまとめたものです。
参考程度に読んでいただきたく思います。
