「本屋で待ってる」
突然の連絡
銀座線に乗って日本橋まで急ぐ
この運命は何があっても
守らないといけない
遠目ですぐに分かったよ
驚かすつもりで本棚の隙から覗いたら
あなたとぴったり目が合ってしまって
なんだか私の方が照れてしまった
涙が潤んで視界がぼやけ
思わず目を逸らした
会いたかったよずっとずっと
胸の奥の方が痛く疼いた
2人だけの秘密
2人にしか分からない合図
2人の交わる視線
これで本当によく理解できた
抱き合わなくても
触れ合えなくても
それだけで愛を感じる
あなたの熱を体に染み込ませたような錯覚
気配を感じるほどの距離で
耳元で囁かれ
もうそれだけで強く抱きしめられたような
そんな思いがよぎる
きっとこの気持ちは
私が年を取り死ぬまでずっと同じまま辿る
一緒に行ったねと馳せる海沿い
向かい合ったテーブル
唇の動き
香ばしいコーヒーの香り
長い骨ばった指
初めてじっくりと大きな手を眺めたな
その手に触れたら
ピアノ線が弾けたようにすべてが狂うんだろう
理性を失ったら今頃どんな未来を迎えているのか
あたしにももうよくわからない
今一緒にいる時間は夢じゃない
そして私のためにあなたがいて
あなたの時間を私が独占して
これ以上にない幸せは
刻々と終わりに近づく
半蔵門までの短い時間
電車に揺られながら肩がぶつかる
匂いを感じる距離で
なんでもない話
「また会おうね」
振り返った斜め後ろ
まだ終わりたくない
さよならの背中から
目を離したら
どうしてだろう
とても清々しくて
すっきりと心が晴れ渡った
必ずいつかあなたに会える
確かにそう確信したから
心に収まりきらない
あなたへの想い
今日の記憶
今日の出来事
今日の想い
一つ一つベッドで並べて
たくさん泣いて
たくさん焦がれて
眠りにつけば
また明日はきっと笑える
「少し休みます
元気でいてね」