深夜の静寂が東京都練馬区の石神井公園を包み込んでいた頃、私は思いがけない出会いを果たした。

都心で、しかもこんな場所で野生の生き物に遭遇するとは、想像すらしていなかった。

ボート池のほとりに続く横断歩道を進んでいたのは、小さなスッポンの子供だった。




自転車を脇に置き、スマートフォンを取り出して、その小さな生き物をカメラに収めた。スッポンは慎重な足取りで、ゆっくりと横断を続けていた。

その姿には、何とも言えない健気さが感じられる。手元に収まった写真を見返すと、私の指と並ぶスッポンの小ささが際立ち、その存在の儚さをより一層際立たせていた。

この都会の一角で、彼が何処へ向かおうとしているのかは知る由もない。

ただ、夜の静寂に包まれながら、その小さな命が無事に道を渡り切る様子を見守ることしかできなかった。

そして、スッポンが道路の向こう側へと消えていくと、私は心の中でそっと願った。「お達者で」と。

短い時間の中で交わったこの小さな命との出会いは、都心の喧騒から離れた、練馬区の深夜の静寂の中で、何とも言えない温もりを残してくれた。この夜、私は東京の一角で、忘れがたい物語を心に刻んだのだ。