誰もいない家に上弟くんと母ちゃんの2人きりです。
上弟くんの機嫌を損ねないように、なぜ突然我が家に来たのか理由を尋ねてみました。
前日の夕方、車で自宅を出てから帰っていない。
疲れたので休ませて欲しい。
お腹が空いた。
シャワーも浴びたい。
ムカついたので、海岸にお金を撒いたが、しばらくして、もったいないと思ったので拾ってきた。
車から焦げ臭い匂いがするから、故障している。
携帯電話がうるさいから、壊した。
などなど、色々な要望や報告があったので、ほんとに機嫌を損ねないよう、言葉尻に気を付けながら、叶えられることから叶えていきました。
会社には急用で休むと連絡を入れ、朝ごはんを食べさせ、シャワーを浴びさせました。
昨日の夕方出てから帰ってなくて、おかんが心配していると思うから、おネェからおかんに、おネェの家に来てるから心配するなと連絡を入れておけ。(薬は飲んでいたらしいから、ここらの考えはまとも)
疲れたから、少し寝る。
おネェは邪魔だから、2階に上がっておけ。
と指示が出されたので、母ちゃんは携帯を持って2階にあがりました。
それから、母ちゃんは、どうすれば上弟くんをかかりつけ医に連れていけるかを考え…
寝ると言っていたが、寝てないかもしれないので、電話だと、病院と話をしているのが上弟くんに聞こえたらマズい。
話さなくても済むようにメールで現状を伝えられないかと携帯をググってみたが、病院の電話番号しか記載されておらず…
声を出さずに、かかりつけの病院に現状を知らせ、病院に連れていったら、すぐに診察してもらえる方法を考えましたた。
沢山沢山考えて、
母ちゃんは、ばあちゃん2号にメールをしました。
今朝、上弟くんが突然我が家に来た。今から、母さんがかかりつけ医に電話をして、家での上弟くんの様子を伝えて。
私がどうにかして上弟くんを病院に連れていくから、すぐに診てもらえるように、病院に頼んでおいて。
といった内容のメールをしたように覚えています。
その頃は、ばあちゃん2号のアルツハイマーも今ほどひどくはなかったので、ばあちゃん2号は母ちゃんの指示通りに動いてくれました。
夜帰って来なかった上弟くんが無事に母ちゃん家にいることを知り、ばあちゃん2号はホッとしていました。
ずっとずっと夜通し心配していたんですよね…
病院からは、12時までに病院に来るようにと言われたらしく、時間との闘いが始まりました。
何て言えば上弟くんが病院に行ってくれるか?
どのように持っていけば、病院に連れて行けるか?
頭の中の全ての細胞を使い、全身で考えました。
緊張して喉が乾き、沢山沢山お茶を飲みました。
時間だけが進み、自宅から病院への移動時間を考えると、あまり余裕がなく、母ちゃんは覚悟を決めました。
上弟くんを病院に連れていけるのは、母ちゃんしかいない。
今日は絶好のチャンス。
今日しかない。
今日を逃したら、ばあちゃん2号は死んでしまう。
上弟くんも死んでしまうかもしれない。
母ちゃんしかいない。
殴られてもいい。
蹴られてもいい。
刺されても仕方ない。
母ちゃんが死ななければいい。
母ちゃんに暴力を震えば、警察が呼べる。
警察に捕まれば、強制的に病院に連れていかれる。
とにかく、母ちゃんが死ななければいい。
この覚悟だけを決めて一階にに降りました。
そして、ソファーに座っていた上弟くんに言いました。
上弟くんを見ていると、すごくしんどそう。しんどそうで心配だから、今から母ちゃんと一緒に病院に行って欲しい。医者に診てもらって、大丈夫だと言われたら実家に送っていく。
だから、今から病院に行こう。
ユーメッセージではなく、アイメッセージで。
あなたをどうにかしたいではなく、わたしがこうしたい。
母ちゃんの気持ちを必死に伝えました。
すると、みるみるうちに上弟くんの顔が変わり
オレがどれだけ病院行くのをいやがっているのか判らんのか!
何で病院に行かないといけないのか!
薬もちゃんと飲みよる!
なんでか!
なんで病院に連れていこうとするのか!
上弟くんがしんどそうだから。
あなたを助けたいから。
あなたが大切だから。
なんでか!
しんどそうだから!
このやり取りを繰り返しました。
上弟くんは、側にあった扇風機を蹴り飛ばしました。
でも母ちゃんは言い続けました。
しんどそうだから、病院に行こう。
お願いします。
一緒に来てください。
母ちゃんは、上弟くんに土下座をして頼みました。
次回
25 病院までの道のり へつづく