亡びたる過去のすべてに
涙湧く。
城の塀乾きたり
風の吹く
草靡く
丘を越え、野を渉り
憩ひなき
白き天使のみえ来ずや
あはれわれ死なんと欲す、
あはれわれ生きむと欲す
あはれわれ、亡びたる過去のすべてに
涙湧く。
み空の方より、
風の吹く
中原中也『心象』より
70から80年余前。
中也さんの心には
どんな風が吹いていたのだろう。
中也さんの詩を読んでいたら
それらは決してポジティブなものではないのに、
過ぎた過去に思いを馳せてそのどうにもならない過去との距離に悶えているような中也さんの姿が浮かんで、
私に勇気をくれます。