『国を治る者は田を鎒(くさぎ)るが若し、苗を害する者を去るのみ』
―治国者若鎒田、去害苗者而巳―
<淮南子>
田の草取りも、今は除草剤などを使ってやるからずいぶんと楽になったが、むかしはいちばんの重労働で、田の中をはいつくばって除草したものだった。国の政治も、その除草と同じ要領で、雑草を取り除けばそれでよいのだという。
へたにやる気を出して、新規の大事業を始めたり、国家成立の根幹にかかわる抜本改革などに着手すると、騒ぎばかり大きくなって、ろくな結果にならない。それよりは、害になるものだけを取り除いて、あとは自然の成長に期待したほうがよいという考えだ。
宋代の司馬光という宰相も、同じようなことを語っている。
「天下を治むるは、たとえば室に居るが如し。敝(やぶ)るれば則ちこれを修(ととの)え、大いに壊(やぶ)るるにあらずんば、更造(こうぞう)せざるなり」
壊れたら直せばいい、建替えなどめったにすべきでない。というのだ。大人(たいじん)の智恵と言ってよいだろう。
※ 鎒(くさぎ)る=耘る(田畑の雑草を除く)
守屋 洋 (著)
文庫: 409ページ
出版社: PHP研究所 (1987/12)
ISBN-10: 4569563805
ISBN-13: 978-4569563800