漬け丼
集中豪雨だった。
小森ダムは200tの放水を始めていた。
瀞ホテルは瀞峡の崖上にあり、眼下に北山川が流れている。
あの日、
転覆隊は「夕方、ホテル前の船着き場に帰還するであろう」と、
瀞ホテル主人に告げて出て行ったものの、
夕方を過ぎて流れてきたものが
折れたカヌーとパドルだったのを見た瀞ホテル主人が救助隊を組織、
漁師の船外機付きの船で“小和田の瀬”まで救助に来てくれたのだった。
(昨年、2人のパドラーが水死する事故が起きていた)
転覆隊は連続轟沈して四散。
相互の連絡さえ取れなくなっており、
行方不明者(ノモ勝村、ターミネーター春日)続出。
「も、もうしませ~~~~~ん」
「ま、まいりました~~~~~っ」と、
戦意喪失。
危険な水の上から退避して岩の上にいた。
カヌーを川から上げられた隊員はいい方で、
アンパンマンなどはカヌーどころか装備品全て流されて、
腰に黄色い防水袋を括り付け浮き袋にしているだけの、身ひとつ。
“小和田の瀬”のエディでは救出できない4艇のカヌーがぐるぐる廻っていた。
そのまま岩の上で一夜を過ごすつもりだった。
「これは新聞沙汰になる」
「絶対、誰か死んでいる」と呟きながら、、、、
あれから、
20年。
あの瀞ホテル主人はすでに亡く、
瀞ホテルは廃墟になっていた。
●20年前の写真。全員揃って食事ができる。たったそれだけのことがどれだけ幸せか。しみじみとした実感があった。
あるイベントがあり、会社の会議室で“鮪の解体ショー”があった。
その現場で“中落ち”を食べた。
3秒前に切断された背骨の周りについていた肉をスプーンで擦り採った“中落ち”である。
最初に試食したのは2~3人。
「美味~~~~~い!」黄色い悲鳴のような絶賛。
試食の順番がワシに廻って来た。
「あれっ」
そのモノは鮮明な赤というより、艶のないどどめ色。
「あれっ」
不味い。と、いうより、全く味がしなかった。
そういえば、
試食の直後、みんなの表情に現れた一瞬の間。
「美味し~~~~い!」の前の一瞬の間。
あれこそが真実だったのだろう。
全員での楽しい会食がその後に続く、注目の試食。
目の前で鮪をぶった切ったのだから新鮮そのものだ。美味しくないはずがない。
味を絶賛し景気づけしなければならない文脈。
「美味し~~~~い!」そう叫ぶ以外に、そもそも道はなかったのだ。
ステーキ肉の熟成はよく聞く話しだが、
その後、冷蔵し自宅に持ち帰った鮪は鮮明な赤色。味も“普通に美味しい鮪”の味になっていた。
こうも具体的に鮪の酸化というか熟成を目の当たりにしたのは、初めての経験だった。
明日。
伝説の“小和田の瀬”をアタックするしないは別にして、
鮪がある。
地元で手に入れたキハダ鮪。
半分は刺身、あとは漬け丼でいただきます。

漬ける時間は鮪の状態(脂の量)によると思うけれど、3分~5分。
漬け過ぎるとせっかくの鮪の味が台無しになる。
“煎酒”は日本酒に梅干しと鰹節を入れて煮詰めた調味料です。
(一人分)
鮪(削ぎ切り):60g~
御飯: どんぶり一杯分
海苔: 適宜
生バジル: 3~4枚
山葵(擦る): 適宜
大根(おろす):適宜
漬けだれ
醤油: 大さじ4
味醂: 大さじ2
煎酒: 大さじ1



