読書を楽しめない子供は、目の不自由な子だけではない。耳が不自由だったり、知的障害があったりしても、長い文章や複雑な表現は理解しにくい。言葉や文化が違ったり、文字を学習する機会がなかったりした人にもバリアーは存在する。バリアフリー絵本は本のバリアーを無くし、障害の有無や国籍、年齢等を超えて幅広く楽しめるよう作られている。
展示される21カ国の50冊は、国際児童図書評議会の障害児図書資料センター(ノルウェー)が2年に1度、世界中から集めた障害児の為の図書から選んだ物。北欧や欧米等、バリアフリー絵本の出版体制が既に整っている国からだけでなく、イランやコロンビア、インド等の作品もある。
コロンビアで初めて障害のある子供達の為に出版された手話DVD付き絵本や、人形を布団に寝かせるイランの布絵本、布に糸を編み込んで刺繍するペルーの伝統的な手法を使った布絵本等、普段は余り目にする事の無い作品にも、直接触れる事が出来る。
また点字や手話の併記だけでなく、国際的な非言語絵文字システム「ブリス」を用いた、文章の理解が難しい子向けの絵本もあった。障害児が描かれた作品には、アスペルガー症候群や自閉症をテーマにした物もあり、理解を深める切っ掛けとなりそうだ。
今後は首都圏近郊のほか、大阪、福島、高知、徳島等で開催の予定。開催場所や期日は、JBBYのホームページ(http://www.jbby.org/ )で確認できる。=「本はともだち」は毎月第4水曜日に掲載します。
本はともだち:戦争や平和考えるきっかけに 親子で読みたい絵本
◇「キンコンカンせんそう」(ジャンニ・ロダーリ作、ペフ絵、アーサー・ビナード訳、講談社)
イタリアを代表する児童文学作家ロダーリ(80年没)の反戦絵本。長い戦争が続き、ついに大砲を作る金属がなくなる。大将は学校や教会など国じゅうの時計台から鐘を集め、巨大な大砲を作った。
◇「やめて!」(デイビッド・マクフェイル作・絵、柳田邦男訳、徳間書店)
男の子は一通の手紙を書き終え、ポストに出しに行く。上空には戦闘機が飛び、街には戦車が走って爆発が起きる。恐ろしい兵士も見るが、男の子は黙々と歩き続ける。ポストの前で、いきなり少年に胸ぐらをつかまれた男の子は、大きな声で叫ぶ。ほとんど文字のない場面が続く絵本。
◇「約束 『無言館』への坂をのぼって」(窪島誠一郎作、アリス館)
戦争で亡くなった画学生の遺作を集め、長野県上田市に戦没画学生慰霊美術館「無言館」を開館した館主が、自身の半生と美術館設立までの道程を振り返った。
◇「海をわたった折り鶴」(石倉欣二作、小峰書店)
広島で2歳のときに被爆した佐々木禎子さんは12歳で白血病を発症。回復を信じ、病床で薬の包み紙などで鶴を折り続けたが、8カ月後に亡くなった。この折り鶴の一つが、ニューヨークにある米同時多発テロの資料館に飾られている。
◇「ばぁちゃんのしべとろ」(みふねしよこぶん、はやしまきこえ、瑞雲舎)
択捉(えとろふ)島・蘂取(しべとろ)で生まれ小3まで暮らした作者が、漁業で栄える町や、川や海、山で遊んだ幼い日々をたどる。懐かしい故郷へ自由に行けない思いとともに、北方領土問題を問いかける。=「本はともだち」は毎月第4水曜日に掲載します。
母思い、父を思う 家族と親子の物語--最近出版された絵本から
今月9日の「母の日」に続き、来月20日には「父の日」を迎える。最近出版された絵本から、家族のかかわりを描いた5作品を紹介する。
「いつまでもそばにいてね」(エリサ・ラモン作、ロサ・オスナ絵、星あキラ訳、ひさかたチャイルド)は、ママを亡くした子リスのロハの物語。パパは「ママはいつでもお前のそばにいるよ」と言うが、ロハにはママの香りが残るマフラーしかない。森の中、ロハはママに教わった方法でクルミを食べ、「ママのことをわすれたりしない」と思う。
「でも、わたし生きていくわ」(コレット・ニース=マズール作、エステル・メーンス絵、柳田邦男訳、文渓堂)のきょうだい3人は、事故で両親を亡くした。別々の家で暮らすことになり、夜になると「パパやママがいたら、どんな毎日だろう」と考える。大人になったら、子どものたくさんいる家庭にしたい--。
「とうさん」(内田麟太郎文、つよしゆうこ絵、ポプラ社)では、新しいとうさんが現れる。「おじさん」と呼び、かあさんにしかられたぼく。新しいとうさんは「いいよ、いいよ。おじさんで」と言ってくれた。でも、最近「おじさん」と呼ぶと、新しいとうさんの体は透き通って緑色になっていく。
「ぼくとかあさん」(いもとようこ作・絵、金の星社)は、独り立ちしたクマを描いた。貧しかったけれど、かあさんはぼくに恥ずかしい思いをさせず、大切に育ててくれた。町に働きに出たぼくは、仕事や友だち付き合いで忙しく、かあさんと話さなくなった。久しぶりに戻った家の玄関には、ぼくの靴が並べてあった......。
古い一軒家を通し、家族の歴史を見つめたのは「百年の家」(J・パトリック・ルイス作、ロベルト・インノチェンティ絵、長田弘訳、講談社) 石造りの小さな家が家族の誕生や結婚、老い、死を見守っていく。家や自然の変遷が緻密(ちみつ)に描かれ、100年の時の流れが伝わる。
イタリアの画家インノチェンティは「エリカ 奇跡のいのち」の挿絵などで知られ、2008年の国際アンデルセン賞画家賞を受賞した。=「本はともだち」は毎月第4水曜日に掲載します。
「主役」は図書館 活躍する司書、利用法解説…魅力再発見
読書の秋、図書館へ足を運んでみたい。司書を主人公にした物語や、利用法をわかりやすく解説した絵本など、図書館に関連した本を紹介する。いままでとは違った図書館の魅力が見つかるかもしれない。
◆「つづきの図書館」(柏葉幸子・作、山本容子・絵/講談社)=写真<1>
田舎の町の図書館を舞台に、司書の桃さんが絵本から抜け出してきた主人公たちの「気になっている人」を探すファンタジー。離婚歴があり人見知りの40代の女性が主人公という、児童書らしくない設定がユニークだ。
◆「図書館ラクダがやってくる 子どもたちに本をとどける世界の活動」(マーグリート・ルアーズ・著、斉藤規・訳/さ・え・ら書房)=同<2>
世界には、本を読みたくても近くに図書館がないところがたくさんある。図書館員やボランティアはラクダ、ゾウ、船、自転車などを使って本を届ける。移動図書館の使命と読書の大切さを伝える写真絵本。
◆「本のせかいへ」(笠原良郎・文、太田大八・絵/アリス館)=同<3>
「わくわく図書館」シリーズ(全5巻)の第1作で、「なぜ本を読むのか」という問いに明確に答える。本によって広がる新たな世界へ、詩と絵でいざなう。シリーズでは、子どもたちが自分たちの夢の図書館をつくる物語も発刊予定。
◆「バスラの図書館員 イラクで本当にあった話」(ジャネット・ウィンター・絵・文、長田弘・訳/晶文社)=同<4>
イラク最大の港町バスラにあった図書館で働く女性は、戦火が町に及ぶ直前、蔵書を守ろうと3万冊を自宅に運び込む。女性は図書館の再建を望み、戸棚や床など家中を本でいっぱいにしながら蔵書を守り続ける。
◆「図書館のヒミツ」(二村健・監修/鈴木出版)=同<5>
「図書館が大好きになる めざせ!キッズ・ライブラリアン」シリーズ(全3巻)の1冊。図書館の利用方法や本の探し方のこつを、図や写真で分かりやすく解説する。他巻では、司書の仕事や楽しい図書館づくりの工夫も紹介する。=「本はともだち」は毎月第4水曜日に掲載します。
富山・カモシカ騒動:図書館で「遊んだ」90分、教科書に 「環境問題も学んで」
女性の地位や権利たどる歴史絵本 小5~高校生向けにシリーズ全4巻
女性の歴史をテーマにした初めての絵本「日本女性史」シリーズ全4巻(大月書店)が発刊された。各時代の女性たちを生き生きと描き、社会的地位の変遷などをたどった。美しい絵と新たな視点で歴史を分かりやすく学べる。
シリーズは小5~高校生向けで、野村育世・女子美術大付属中高教諭ら女性研究者3人が執筆した。(1)原始・古代・中世(2)近世(3)近代・現代(4)学習の手引き--の4巻で、各巻共通のテーマも設けた。
1巻は、卑弥呼ら女帝をはじめ、戦いや政治にも参加した古代の女性を描く一方、飛鳥時代の律令制度導入で女性の地位低下が進んだことを記した。2巻では、江戸期の家父長制度の下、男性と同等に働きながら低く扱われた商家や農家の女性を描いた。
3巻では女性の働く権利を守った社会運動や、性同一性障害などにも触れている。最終巻は女性史年表に加え、用語解説で「縁切寺」「母性保護論争」などを取り上げた。
全巻を通じ、市井の女性の史実も数多く紹介。江戸時代、男装して島流しになった「たけ」や、偽金づくりの夫に離縁を求めて罰せられた「むめ」など、実名で記した。大月書店の桑垣里絵さんは「各時代の女性の生き方を具体的に示せた。結婚形態の変遷や性被害など、女性が生きていく上で避けられないテーマも盛り込んだ」。
野村さんは「教科書の日本史は男性の視点で描かれがちだが、女性も歴史をつくってきたことを知ってほしい。特に女性に読んでほしい」と話した。
3巻のみ2625円、他巻は2100円。=「本はともだち」は毎月第4水曜日に掲載します。









