チャーリー式
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『彼女がその名を知らない鳥たち』 沼田まほかる

何というだらしのない女だ、沼田まほかる。

畳めよ。畳め。


もうコイツは主義として畳まない事にしているとしか思えない。

前作に比べれば広げてはいない。

だが、広げ方がささやかなら畳まなくてもいいのか。

ワタシも、畳まれることは期待していないと言いながら、こうも畳まれないと、コイツの主義の通し方に憤る次第だ。



ふう。取り乱した。


そんな訳で『彼女がその名を知らない鳥たち』

個人的に、ヒジョーに嫌な処を刺激される小説だった。


恥ずかしながら告白すると、深夜に寝床で読んでいる途中で

「この陣治ってオレじゃないか?」

と、隣に寝ていた嫁を起こして訊いた。


何というか、この陣治という男のダメな処が我が事としか思えず、いたたまれない気持ちに苛まれた。

ラストでこの男はダメ人間ならではのダメな行動で物語を締め括るのであるが、それはもう愛とかいうことは置いておいて、ダメなやり方なのである。

この行動自体が、まさにこの男のダメ振りを表しているといって過言ではない。

全く、もう一寸やりようがあるだろうにと思わずに居られない。


号泣したがな。

ちなみに、嫁には、翌朝「頭がおかしいのか?」と笑われた。


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『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる

広げた風呂敷が畳まれる様がミステリの妙だとすると、ワタシはあんまり其処には興味を示していないかもしれない。

寧ろ、周辺にちりばめられた日常ならざるものへの興味が強く、そういった意味では別にミステリを読まなくてもいいのにと思うが、サイコさんがジャンルとして確立された感のある今日、ミステリはそういった日常ならざるものに溢れているので、勢い読むものがそこに偏ったりする。

何かコムツカシク書いてみたが、実は嫁の買ってきたのをテキトーに読んでいるだけだったりする。

そんなことで『九月が永遠に続けば』


何だろう。このデジャヴュは。

この風呂敷畳まない感は『ピース』に引き続きだ。

畳まれた部分だけ見ても充分面白いが、ワタシの興味は、その畳まれなかった部分にあるのだよ。

逆に、畳んだ部分をバッサリ切って、畳まれなかった部分だけで1冊書いて貰いたい。

と、苛々する位のナイスな設定。

『ピース』に比べればまあ大向こうは納得する位には畳んであるので、一般受けはコチラの方が充分かと思うが、畳まなかった処が美味し過ぎるだけに勿体無い感満点。


爪だけ食って蟹味噌を棄てるとか、蕎麦食って蕎麦湯を飲まないとか、饅頭の皮だけ食ってあんこ棄てるとか、異常な贅沢さを感じてしまう。


編集者は、畳ませなかったのか、畳めなかったのか、畳んだが面白くないのでバッサリいったのか、どれだったのか、そんな事に思いを馳せるという、通常の小説の読後には無い、贅沢な余韻がついてくるので、そういった意味ではお得な小説なのかもしれない。

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『ピース』 樋口有介

嫁の読後の感想曰く「何だかなあ」との事でしたが、取り敢えず掴み取りでいってみました。

確かに大向こうを「何だかなあ」と困惑させる出来であります。



一寸スゴイのは、一番謎を抱えたキャラクターについて描写に頁を割き、伏線を張りまくり、そんでもって放ったらかすというヒジョーに贅沢な使い方をしている処。

別に謎は解決されねばならないとは思っていないので、それでも構わないのだが、その場合は、垂れ流しのイメージを魅せることに、もっと腐心して頂きたいとの注文は付けたいが。


それでも本作が読ませるのは、登場人物のキャラクター立っていて、台詞も描写も洒脱で、小説の創りとしてはとても面白く出来ているからに他ならない。

樋口有介、この風呂敷の畳まず具合を、敢えてやっているとしたら、中々のツワモノであります。

加えて、この投げっぱなしジャーマンのような小説を書かせた編集者の懐の深さにも、アッパレを差し上げたい。


もう一つ。畑中純の描く表紙のイラスト。オチでなるほどなあ~と思わせる。
本としてよく出来ていると思いますね。


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