リヨン⇒ヴィエンヌ (Vienne) 33.5km
1998年8月18日(火) 晴、暑

 



 

 

信頼できる道案内人は
 出発時に入口ドアー隅をチェックすると仔ネズミの死骸はそのままになっている。受付嬢に、どうなっているの? と質すと男子従業員を呼んでくる。その男が確認するが
「これはオレの仕事ではない」
 と言い捨てて不快げに立ち去る。
 結局、お金に余裕のある旅行者はあえてこのYHを利用する必要はない。換気は悪いし、高速道路騒音がすごいし、その上に不潔ときている。
 リヨン市街を抜け出るのにまたもや道に迷う。これまでの経験から、道案内で信頼出来る人は次のような人々。トラックや車の運転手、駅員や郵便局員、勿論警察署員。それに不思議と職種に関係がないが、オツムの光っている人とツッパリ風の青少年。
 今朝は小さな公園で女性2人と散水掃除している清掃員に問う。カタコトの英語混じりで説明してくれる。日本人か? どこから走ってきた? スウェーデン?! となって、しまいには、ヨシ、オレの車に付いて来いと言いつつ、女性2人にも仕事を切り上げさせて作業車に3人が乗込み今来た道を走り出す。小生は懸命にペダルを漕いでついていく。
 ややこしい道を走ってしばらくすると、三差路で止まって待っていてくれる。
「ここを左へ行くのだ。約1キロ行くと再び三差路にでる。そこをやはり左へ行く。4、5百メートルで国道7号に出る…。ところで本当に自転車でスウェーデンから走ってきたのか? ここまで何日かかった? フーン」
 と言いつつ、彼もどうしてか左の道を走り出す。三差路や十字路があってややこしい道を走っていると先ほどの清掃車がまたも止まっていて、男が車から降りて立っている。
「ここを左へ行くのだ。1本道で国道に出る。それを左へ行けばいい…。で、リスボンへ行くとか言ったが本当にポルトガルまで走っていくのか? フランスはどうだ? フランスは好きか? 何か困っている事はないか?…」 
 どうしてか、小生、言葉が返せない。途端に涙が出てきて、下を向いて握手をし、メルシィボクとお礼の言葉を繰り返すのみ。ここで別れたが、走りながら何度も振り返る。刈り取られた麦畑の向うに清掃車が少し進んでは止まって、3人が盛んに手を振っているのが見える。当方も手を振り返す。
 男は45歳前後の小柄、よく日に焼け、苦労人らしくシワクチャだらけの顔。彼も前部に髪がなく、ツヤのないオデコの、善良そうな男であった。ファン・ゴッホ描くところの土に生きる男、ポテト・イーターに出てくる男の風貌であった。
 自転車修理の前に荷物を預かってもらうべくYHに入ると、満員!!と言う。それはおかしい、昨夜リヨンのYHの受付員から予約を取ってある筈、と言うと、台帳にはそんな記帳もないし引継ぎも受けていない、とガンバッてくる。当方もつい声を荒げ反論すると
「では、なんとかしよう。荷物は預かっておく。自転車屋は電話で調べて上げよう…」
 ホッとして彼が書いてくれたメモに従い急いで自転車屋に出向く。

 

 

リヨン (Lyon) のYH前 汚いYH、ドアのところにネズミの死骸

定年欧州自転車旅行 1998.08.18(火) 8:20 晴

 

 

ヴィエンヌ(Vienne)のYH前 車の騒音は大変だ

定年欧州自転車旅行 1998.08.19(水) 7:30 晴