小林正観さんの本の中からお気に入りの物語を載せさせていただきます。
ウサギとカメ
もしもしカメよカメさんよ
世界のうちでおまえほど
あゆみののろいものはない
どうしてそんなにのろいのか
という歌詞で始まるウサギとカメの物語があります。
カメはこう答えました。
なんとおっしゃるウサギさん
そんんあらお前と駆けくらべ
むこうのお山のふもとまで
どちらが先に行き着くか
ウサギはこう考えます。
どんなにカメが急いでも
どうせ晩までかかるだろう
ここらでちょっとひと眠り
グー グー グー グー
グー グー グー
と、ウサギさんは寝込んでしまうのです。
その結果として、
これは寝すぎた しくじった
ピョン ピョン ピョン ピョン
ピョン ピョン ピョン
と追いかけて行ったのですが、すでにカメさんはゴールインしていました。
あんまり遅いウサギさん
さっきの自慢はどうしたの
と言ってカメはニッコリ笑うのです。
カメはウサギと駆けくらべをして勝利者となったのでした。
これがウサギとカメの物語です。
ここまでは良く知られた話。
ここから先は小林正観さんの創作話。
さて、月曜日にその競走をしたウサギとカメなのですが、ウサギが「火曜日にもう一度競争をし直そう」と提案します。カメさんは「ああ、いいよ」と言って、翌日また同じスタートラインに立つことになりました。
ウサギさんは、「よーい、ドン」の掛け声とともに「今度は絶対に寝ないぞ」と覚悟を決めて、ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、
全く寝ないでまさにあっという間にゴールインしてしまいました。
カメはゆっくりと、でも一生懸命走り、ウサギのあとに何時間もたってからやっとゴールインしました。
ウサギは「どんなもんだ。まともに走ればやっぱり俺の方が速いだろう」と自慢します。
カメは頭をかきながら「やっぱりウサギさんにはかなわないね。」と、こちらも微笑み返しました。
この物語はこれでは終わりません。
今度は、負けたカメがこういう提案をするのです。
「明日もう一回走らないか」
絶対に負けることがないであろうと完全に自信を取り戻した
ウサギさんは、
「いいよ、何回でも何十回でも挑戦を受けてやる」
といって、水曜日に3回目の競争にのぞむことになりました。
水曜日、2人は「よーいドン」でスタートします。
気を抜かないでちゃんと走ったウサギさんは、やはりあっという間にゴールインしました。
カメさんはそれから何時間もかかって、やっとゴールインするのです。
ところが、昨日は少しガッカリしたような顔をしていたカメさんが、なぜかとても嬉しそうに、楽しそうにゴールインするではありませんか。何時間も待ちくたびれていたウサギさんでしたが、カメさんのこの上機嫌な顔を見てとても不思議に思いました。
そして聞くのです。
「なんで君は昨日に比べてそんなに楽しそうな顔をしているんだ」
カメは答えます。
「いやあ、昨日走った時間よりも、今日のほうがずっと速く走ることができたんだ。自己の最高記録を更新したと言うことなんだ。」
ウサギさんはこの言葉に衝撃を受けました。そして、勝った方でありながら、ウサギさんは「明日の木曜日、もう1回走ろう」と提案するのです。
カメさんは快く引き受け、4回目の競争が木曜日に行われることになりました。
「よーいドン」
ウサギさんは、ただひたすら走り続けました。カメさんはまただいぶ遅くなったのですが、ウサギさんはとても満足そうに、ニコニコしてゴールのところで待っていました。
カメさんが汗をかきながら(カメが実際に汗をかくかは定かでありませんが)たどり着くと、ウサギさんはニコニコしていて上機嫌な様子です。カメさんが聞きました。
「今日はずいぶん機嫌が良いのだね。なんでそんなに楽しそうなんだい」
ウサギはこう答えました。
「うん、昨日君に教えてもらったように、今日ぼくは一生懸命走って自己記録を更新したのさ。今まで出一番速くこの距離を走ることができたよ。ありがとう。」
「ああ、それはよかったね。」
と、この日は2人ともいい笑顔で終わりました。
さらにカメさんは、「明日も走らないか」と提案するのです。「きっとカメさんは何か考えているのだろう」と思い、ウサギさんも快く承諾し、またまた金曜日に2人で走ることになりました。
金曜日、スタートラインに立とうとしたウサギさんは見張りました。カメさんが仲間をたくさん連れてスタートラインに並んでいたのです。
「みんなで楽しく走ろうと思ってね。ウサギさんといくら争っても勝てるわけはないから、ぼくの仲間を呼んできて、みんなで走ろうと思ったんだ。」
とカメさんは言いました。
「ああ、それは面白い考えだ」とウサギさんは思いました。もちろんウサギさんは全力疾走をして先にゴールしたのですが一人で先に待っているウサギさんは、寂しさを感じずにいられませんでした。」
それから何時間もたって、多くのカメさんたちがぞろぞろとゴールインしてきたのです。みんな笑顔でおしゃべりをしながら、とても楽しそうに、ゆっくりゆっくりとゴールインしてきました。
同じ競争をするのでも、こんなに楽しい競争の仕方があるのだ。同じような仲間と走ったら楽しいのではないか?ウサギさんはそう考え、今度はカメさんにこう提案します。
「明日も、もう1回走ってくれないかい」
カメさんはもちろん「いいよ」と答えました。
そして土曜日。6回目のかけっこになります。
なんとこの日はウサギさんが仲間をたくさん連れてきました。カメさんも仲間をたくさん連れてきたので、二つのグループがそれぞれのグループで楽しみながら走ることになりました。ウサギさんたちも速いのは速いのですが、全力疾走ではなく、ジョギング程度の速さで、皆で談笑しながら走るのです。
もちろんカメさんたちも、話をしながら、途中で景色を見たり、お弁当を食べたりしながら、ゆっくりと走り続けたのでした。
土曜日の夕方、レースが終わってウサギさんとカメさんはこう言うのです。
「明日の日曜日、もう一回みんなで集まらないかい」
「うん、ぼくもそう考えていたところだ。明日もう一度集まろう」
日曜日がやってきました。いよいよ7回目のレースです。
朝、顔を合わせた2人は、全く同じことを言い出しました。それはこういうことでした。
「よく考えてみたら、競い合って、比べあって、争いあって走り続けるのって、意味がないのではないか?ウサギはウサギ同士で、カメはカメ同士で楽しく走ると言うことに喜びや幸せを感じてしまったのだけれども、そういうふうにみんなが集まって楽しい時間を過ごすためには、何も競争というかたちを取らなくてもいいような気がする。みんなでお弁当を食べたり、景色を楽しんだり、咲いている花を愛でて、楽しい会話をし、助け合いながら何かをする。そういう時間がとても楽しいのではないだろうか?競争することに何か意味があるのだろうか」
結局2人はそういうことに気が付いたのでした。
「確かに僕たちは、最初に競争して走るということをしなければ、このことに気づかなかったかもしれない。でも、毎日競争しているうちに、こんな簡単なことに気が付いたのだね。」
そしてウサギさんとカメさんはニッコリと笑い、お互いに固くがっちりと握手をして別れたのでした。
新しいウサギとカメの物語が、21世紀初頭のこれから、始まるのです。
長い日記を最後まで読んでいただきありがとうございます。
この日記を読んでいただいたすべての方に感謝します。
そしてすべての人にすべての良き事が雪崩のごとく起きます