「よしかわ」と帰ってみるとびっくり。なんだか引っ越し作業が始まっている・・・・。

「よしかわ」もびっくりしている・・・・。「たかし」が血相を変えて近寄ってきた。


「ここで炊き出しをするんだってさ。しかもコーヒーだけ。だから対策本部を隣の店に

移すんだって。『あすか』さんが今引っ越しは仕切ってくれている。」


しかし突然。どうやら本社との会議で決まったらしい。個人的にはいまさらって感じだが、

みんな慌てて準備している。


まずそもそも「コーヒー」って、豆を煎じた飲み物らしいけど、豚の僕的には、そんなもん

この大変なさなか、飲みたいのか?社会的責任がどうとか言っているけど、それなら

ここにある食料を配ったほうがいいんじゃないかなぁと思うんだが。


「たかし」はいろんな計算を始めた。「あすか」は引っ越しに大慌て。んで、「よしかわ」

が本社の人間と押し問答し始めた。


「この引っ越し、危なくありませんか?」


「ん、何が?」


「いや、この状況で食糧とかを外に出すと危険が伴いませんか?」


「それは『あすか』君の責任の下、やってくれているよ」


「責任って。何かあったら責任を押し付けるんですか?そもそもコーヒーの炊き出し

なんて、あんまり意味がないと思うんですが。だったら一刻も早く営業再開の手を

考えたほうがいいんじゃないですか?」


「それは現在検討しているよ。」


「結局こんなにデシジョンがコロコロ変わって、振り回されるのは現場の我々なんですよ」


「良いじゃん、今仕事があるだけありがたいんじゃないかい?」


「は?」


「『よしかわ』さーん、こっち手伝ってー」


「あすか」が遠くから様子を見て、叫んでくれた。ただならぬ雰囲気を感じたんだろうか、

ナイスタイミングだったみたい。僕はそのまま子供たちと一緒に2Fに待機することに

なった。


引っ越しは何とか順調だったが、「たかし」がとんでもないことを言い始めたらしい。

「たかし」の店とは違った食料が山積みされていた。ただ違うのは、1つ1つ袋詰めされていた。


「『よしかわ』さんの分はこれね。持って行って下さい」


 そうか、この袋づめは一人ひとりの分を仕分けしていたのか・・・・その瞬間、「よしかわ」の

雰囲気が変わったのが、こぶたの僕にもわかった。


「『みむら』さん、これ全部仕分けしたんですか?』」


「そうですよ。キチンと分配しなきゃいけないから、全部数えて管理してあります」


「でも家族の数も違うし、欲しい物の種類も違うから、逆に自由に持っていけるようにしたほうが

いいんじゃないですか。うちはこんなにコーヒー要らないし、逆に水は子供が小さいから欲しいですね」


「混乱が起きてしまうからこれじゃなきゃだめです。サインしていってください」


 聞いちゃいない・・・・「よしかわ」の言っていることはごもっとも。こぶたの僕の食べられそうな物は

一つもないし・・・・「よしかわ」はそこから口を利かなくなって、そのまま僕を抱えて車に乗り込んだ。


「むかつくな、あのジジイ・・・・」


 けっこう「よしかわ」って、毒舌・・・・。いつもはニコニコしてるんだけど、2人きりになると結構きつい

こと言ってる・・・・。でも言っていることは理にかなっている…。なっちゃんの言葉を借りれば、例えるなら

「ジャックナイフ」。鋭利だよなぁ。


 「よしかわ」と僕はそのまま「たかし」の店に戻った。そうすると、なんだかバタバタしている様子。

一体何が起こっているのやら・・・・。

「よしかわ」は僕はだっこすると、「たかし」と「あすか」にこう告げた。


「そういえば、もう一つの拠点に食料があるって聞いた。俺、行って様子を見てくるよ」


彼の店は天井が崩壊し、危うく津波にのまれそうになったらしい。僕と同じような所から逃げてきたんだそうだ。車の中で、彼が逃げる際、「かしな」に見捨てられたことを相当恨んでいると言っていた。なんでも、目の前で自分を置いて、さっさと逃亡していったらしい。「たかし」ですら僕らを助けてくれたのに、人間の中にもひどいことをするやつがいるもんだ。


「よしかわ」もいっぱい車の中で話してくれた。奥さんと可愛い娘さんの3人暮らしのこと。地震の時、家族の大切さを思いしったこと。三度の飯より娘さんが可愛いこと。「あすか」も「よしかわ」も本当に家族を大切にしている。「たかし」にも家族が出来れば大切にするのだろうか。


そうこうしている間に、「たかし」の店以外のもう一つの拠点の店舗に着いた。この店は昨年に出来たばかりの店舗らしい。確かに外観は立派で、地震の被害もあまり見られないようだ。


「『よしかわ』さん、無事でしたか。よかったよかった」


店長らしき人物が出てきた。彼の名は「みむら」。見た目はすんごくおじさんなんだが、「よしかわ」と同じくらいの年齢らしい。


「『みむら』さんこそ無事でよかった。お店も大丈夫そうですね」


「そうでもないんですよ」


店内に入ってみるとびっくり。出来たばかりの建物なのに、あちこち崩れていたり、ひびが入っている。「たかし」の店より被害が大きい。今回の地震で分かったんだが、建物の古さは関係なく、どのくらい揺れたかがポイントらしい。「地盤」とかなっちゃんが言っていた。


「よしかわ」と一緒にお店に入るとびっくり。たくさんの食料が山積みになっていた。