竹田と理沙は駅までの道のりを歩いていた。
2人の会話と言えば
明るい未来に満ち溢れていた。
竹田
「まだ理沙とは付き合って間もないけど理沙の事は守るよ」
理沙
「ありがとう。そんな竹田さんが好き。でも無理しないで」
竹田は理沙を抱きしめると熱くキスをした。
束の間の静寂が続く。
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「ヒューご両人さん!熱いですなぁ」
突然の怒声が二人の間に広がる静寂を裂いた。
4人の不審な影が竹田と理紗の行く手を阻む。
竹田
「君達は誰だ?ちょっとどいてくれないかな?」
しかし、この男達の顔に竹田は見覚えがあった。
理紗にとっても同様だった。
ほんの数時間前に瑞貴に叩きのめされた、早川、倉石、小菅、杉谷の4名。
この辺りを根城にしている仁流会のチンピラだ。
早川
「へへへ、兄ちゃんに用は無いんだわ。お嬢ちゃん、俺達と遊ばないか?」
理紗は怯えながら、竹田の背に隠れた。
竹田
「お前ら何言ってるんだ?どけよ」
竹田は早川を突き飛ばした。
早川
「痛ってぇ おいおい。暴力は良くないなぁ 暴力はよぉ!あちゃ~腕が上がらんわ。どう、落とし前とるんじゃ」
竹田
「お前ら、さっきもやられたばかりだろ?まだ、凝りてねぇのか?」
早川
「ははーん、やっぱりお前、あの場所にいたよな!この可愛いお嬢ちゃんは、はっきり覚えていたんだけどな。てめぇ!俺らを馬鹿にする発言してたよなぁ
なら、お前は生かしておけんわ」
倉石
「お嬢ちゃんは、後で俺達と楽しい事して遊ぼうね」
そういうと、倉石は理紗の後ろから理紗を羽交い絞めにした。
竹田
「辞めろ、理紗に手を出すな!」
早川
「へへへ、だったら俺達から奪い返してみろよ」
倉石
「へへへ!兄貴ィこの女いい体してますぜ。早いとこそいつ片付けて楽しみましょうぜ」
竹田
「止めろぉ!理沙に手を出して見ろ。絶対に許さないからな」
早川
「おいおい、この状況で何言ってやがる」
早川
「怪我しないうちに女置いてお家に帰ったほうがいいんじゃないか?なぁそう思うだろ」
倉石
「兄貴、この女ええ乳してますわ。この尻たまんねぇ」
倉石は股間をこすりつけてくる。
理沙
「嫌ぁ!止めてぇ」
倉石
「へへ、いい声で哭くなぁ」
竹田
「お前らぁ」
竹田の怒りは頂点に達していた
理沙
「だめぇ!竹田さん逃げて!」
倉石
「へへ、聞いたか?うちらとやりたいから、お前は邪魔だとよ」
竹田
「理沙は俺が守るっていっただろ!理沙ぁ」
早川
「いい加減くたばれやぁ」
p>そういうと
いきなり殴りかかってきた。
「キャーー!」
理沙は悲鳴を上げ顔を背けた。好きな男が殴られる姿など見たくもなかった。逆に竹田を救う為なら、こいつらになぶられる覚悟も出来てた。
竹田は、一呼吸すると強烈な前蹴りを早川のボディに入れた。カウンター気味に突き刺さる前蹴り。
一瞬の事だった。
誰もが唖然とした。
あの理沙ですら、竹田の行動は予測出来なかった。
と言うのも、会社での竹田は温厚かつシャイで物静か。どちらかと言うとトロいほうで同僚にいつも構われてるような存在だったからだ。
瑞貴の放った蹴りとは、また違ったタイプのハンマで叩きつけるような蹴りだった。
獰猛直進。
そんなニュアンスがぴったりだった。
早川は、悶絶しそのまま意識を失った。
竹田は上衣を脱いだ。そこには外見とは非なる男の姿があった。着痩せしてる身体つきとは違い、研ぎ澄まされ肉体が力強く躍動する。
竹田は拳法の構えをとった。ボクシングでもキックでも、空手でも無い未知なる構え。
これこそ、戦場用に日本拳法をベースにあらゆる格闘技を取り入れ改良した自衛隊の徒手空拳の構えだった。しかも竹田は、現役時代は特殊部隊レンジャーにも所属していた男だった。
竹田は小菅に近寄ると、静かに首を?むとムエタイの首相撲の体制に移った。2本の前腕刀をもって小菅の頚椎をしっかりと締め上げ、首を左右に揺さぶり
体制が崩れた箇所への容赦ない膝蹴り。
そのまま首投げでぶん投げる。
倉石は、刃物を抜くと
理紗の喉元へ当てた
「へへへ、や、やるじゃねぇかよぉ 兄ちゃん。
これ以上近づいてみ、見ろぉ お嬢ちゃんの命はねぇよ」
一瞬怯んだ。
その背後を木刀を手にした杉谷が身構える。
杉谷は剣道の有段者だった。
倉石は杉谷に目で合図すると不適な笑みを浮かべた。杉谷に顎て合図を送ると、杉谷の発声音とともに、木刀を脳天めがけて降りおろされた。
「キャー」
理沙の声が響き渡る。
直撃の寸前、竹田は首を傾げた。
杉谷の剣は竹田の肩に寸前で止まった。
竹田
「剣術ではないスポーツの悪いところが出たな」
そう言い残すと木刀を握りしめた。
竹田は力強く引くと杉谷も盗られまいと木刀を引き寄せた。その瞬間、竹田が手を放すと杉谷はよろけて後方へ吹き飛んだ。
倉石
「おい、まじでここまでだ。やんちゃが過ぎたようだなぁ
惜しい女だったがな。」
倉石はナイフを振り上げた
「ねぇ お兄さんったら?」
背後から女性の声が聞こえてきた。
倉石
「なんだ?」
倉石は一瞬振り向いた。
その瞬間、散手が倉石の目に当たり視界を失った。
「うーーー 誰だぁ」
その女性は、そのまま倉石の右手首を持つと捻り上げ、もう片方の手で肘間接を浮かせ背中側へ腕を持っていく。
少林寺拳法の金剛拳の吊上捕という技である。
「いててててて・・・・・・」
女性は、さらに深く締め上げると倉石の手からナイフが抜け落ちた
チャリーン
理沙はその隙をついて竹田のもとへと走り去った。
女性
「もう大丈夫よ」
倉石
「は、離せぇ いてててて・・・・ 誰だてめぇは」
倉石の影となって良く見えなかったが、背中越しからあの愛くるしい顔がヒョコっと現れた。
OLD CROWのバーテンダー彩葉である。
彩葉
「このサディスティック男の始末はどうしようかしら?」
竹田
「まかせるよ」
彩葉
「そうね、二度と悪さが出来ないように肩関節でも破壊しておく?」
そういうと
倉石の肩関節を外してしまった。
「ぐふぁ」
倉石は、右肩間接を庇うようにして、その場に倒れた。
追い討ちをかけるように無防備になった男性自身を踏み潰した。
声にもならず失神した。
彩葉
「これで懲りるかしら?」
竹田
「理沙、大丈夫か?」
理沙
「うん、大丈夫。ありがとう」
竹田
「いっただろ?理沙は俺が守るって」
理沙
「でも、驚いた。竹田さん、全然会社の時と雰囲気が違うんだもん」
竹田
「ちょっといろいろ事情があってね」
竹田
「理沙・・・」
杉谷はゆっくり這い上がると兄貴分の早川の腰元を探った。そこには重い鉄の塊が冷酷な表情で収まっていた。それを抜き取ると竹田めがけて、銃を構えた。
「て、てめぇぇ コケにしやがって・・・
ぶ、ぶっ殺してやるぅぅ・・・・」
そう呟いた。
竹田からは死角になっており気づかなかった。
杉谷は震える手で引き金をゆっくりと引いた。
引き金の遊びの部分まで引けたが、それ以上はなかなか引けなかった。
こんなに引き金って重いものなのか?
後、1cm引き金を強く引くことで銃弾が発射する。
この重さは、人一人の命の重さでもあった。
重いはずだ。
杉谷は、
目を瞑り
「うわあぁぁぁっぁぁぁぁ」
言葉にならない奇声をあげ、最後の一線を越えた。
バーーーン
・・・・・・・・・・
長い沈黙が続く。
銃口から立ち上る硝煙の匂いが杉谷を正気にさせた
「うわああああああぁぁっぁ」
そういうと、杉谷は走り去った。
静かに崩れる美しい肢体。
竹田では無かった。
銃弾が発射されると同時だった。
いち早く気が付いた理沙が、竹田を庇ったのだった。
「ぐふっ・・・・」
理沙の口から潜血が飛び散る。
理沙の腹部から血が滲む。
竹田は怒鳴った
「理沙ーーーー!!」
彩葉は、杉谷を追おうとした
竹田
「もういい。それより早く救急車を。救急車を呼んでくれ~」
彩葉
「分かったわ」
しかし、もう手遅れだという事は見てすぐに分かった
理沙
「竹田さん、楽しかったぁ。今日、告白してくれてありが・・・・と・・・・・」
竹田
「理沙、喋るなぁ!理沙。ゴメン、ゴメン
俺、俺守ると言ったのに、守るって言ったのに・・・」
理沙
「わ、わたしね。王子様に抱・・・かれて眠るのが夢だったの・・・変でしょ
でも、最後にゆ、ゆめがかなっ・・・・・ハァ ハァ・・・・」
理沙
「あり・・・が・・・・と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・-」
理沙の体は、竹田の胸元に重く寄りかかった。
竹田
「理沙ーーーーーー!!!!!!!!!!」
静かな闇の中、けたたましいサイレン音がいつまでもいつまでも鳴り響いた。
つづく