おだまりな

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前回までのあらすじ

駒沢隆というごく普通の高校生がある日突然巨乳に。

しかし、それを機に学校中の人気者となり、メディア出演も果たし一躍有名人となる。

 そして生徒会長にも当選し、巨乳が転機のように彼の日々をバラ色に塗り替えていく。

そんなある日、隆の噂を聞きつけてレディース軍団が隆の高校までやってきて・・・

 

 

学校の全クラスが窓から正門を見下ろしました。

英語の授業中であった隆のクラスも皆窓際に集っています。

「学校1の巨乳降りてこいや」

こんな言葉を生きているうちに聞くことがあるのか。隆はこんな事を心の中で思っていましたが、その時「学校1の巨乳」これは確実に自分のことを言っていると思いました。隆もアホではありません。まず隆が学校一の巨乳かどうかは判断がつきませんが、隆が巨乳になるまではこんな襲来はありませんでした。不意に出来たDカップ、全校生徒中その事実を知らぬ者はいない、テレビを通してのメディア出演、その後謎のレディース軍団の「学校1の巨乳出てこいや」発言。もうこれは俺のことを言っているに違いない。隆は頭の中で今までの出来事を丁寧に並べながらそう確信しました。

その時、クラス一のデブ清水君が口を割りました。

「あれ、俺の事かなぁ」

「いやちげーだろ」

隆は即座にツッコミを入れました。

女子が言うならまだしも、なぜ男でデブの清水、お前が言う。明らかにあのレディース軍団は自分のことを言っているのに、なぜ清水がしゃしゃり出てきたのか隆には理解できず腹が立ちました。

 

正門ではスケバン女等8人が間だ吠えていました。

「はよ降りてこいや!」

声を張るのは戦闘員らしき下っ端です。

「おっパイセン!なかなか出てきやしませんね」

「・・まあじきに降りてくる」

後方で呟くように言ったのは総長らしきまだ名の知れない女。その女はおっパイセンと呼ばれていました。

「あ、あれ」

1人のスケバンが前方から歩いてくる男指さしました。隆です。

一歩一歩、大きく踏みしめ隆はスケバンの前までやってきました。

「お前かこの学校1の巨乳は?」

先ほどから声を荒げていたスケバンが言いました。

「はい」

隆は素直に返答しました。

「噂には聞いてたけど・・まじか」

そのスケバンには明らかに驚きの表情が見て取れました。しかしその顔も一瞬です。

「おっパイセン、来ました」

後方からゆっくりと隆の前に総長らしきスケバンが近寄ってきました。そして一言

「私のこと知らんか?」

見下ろすような目つきと共に言い放たれたその言葉に対して隆はいかにも真面目にこう答えました。

「いや、存じ上げませんね・・」

「ほう。そうか。これは参ったな。この期に及んでまだ私のことを知らんか」

「・・はい」

隆は目を凝らしてその女を見ましたが全く誰だか分かりません。分かるのは彼女が隆と同じくらい巨乳だということです。

「知らんなら教えてやるよ。私の名前は越田美乳(おったびちち)。若いのは私を『おっパイセン』そう呼ぶ。西女子高の一番の巨乳だ。以後お見知りおきを」

「初めまして」

隆はいつも以上に礼儀正しかった。

「お前が、駒沢隆だな」

やはり隆の正体は知られていたみたいです。

「お前まさか、私より胸デカいんじゃないだろうね?」

隆は一瞬何を言っているのか訳が分かりませんでした。分かる訳のない質問に隆は返答できないでいると、

「聞いてんだよ」と催促されました。

「いや、すみませんが、分からないです」

「お前が私よりデカいかデカくないかで大分話が違うんだよ。ずっとお母さんだと思ってた人が実は見知らぬオランダ人だった。っていうくらい話がこじれてくるんだわ」

隆はこんなに理解できない例えを聞いたのはこれが初めてです。

「どういうことですか?」

「お前男だよな?」

隆はこう言われて自分が改めて男と気付くことがあります。

「はい」

「じゃあなんでこんな胸あるんだよ」

「いや、それが急にできて」

越田にはその意味が分からなかったようです。

「・・お前の胸はトカゲのしっぽか」

「え?」

隆は本当に意味が分からず思わず言葉を漏らすように言ってしまいました。

「トカゲのしっぽって切れたら1回限りでまた生えてくるんだよ。お前のもそれみたいに生えてきたっていうのか?」

「いや俺は元から胸なんてないから、新たに生えてくるとかそんなんじゃないっすよ」

「あっそう」

越田は素っ気なくそう言い放ちました。

すると後方から教頭の上山先生と校長の西日暮里先生がやってきました。

「君たちなにしてるんだあ!」

西日暮里校長は極めて真面目な顔をしています。その顔に似合わぬ大きな声を出して隆を守りに来ました。越田は教頭と校長が来たのを厄介に思ったのでしょう。隆の顔の目の前でこう吐き捨てて後を去るのです。

「お前、そんな偽物の鎧着て調子こいてんじゃねーぞ」

レディース軍団は各々の単車にまたがり走り去っていきました。

「駒沢大丈夫か!?」

教頭の上山先生が隆を心配しています。しかし、隆の耳にはその言葉が入ってきません。彼の頭の中には越田が最後に言い放った「お前、そんな偽物の鎧着て調子こいてんじゃねーぞ」

という言葉が耳鳴りのように響いているのです。

「それにしても上山先生。あの子達胸が大きかったですね」

「何言ってんですか西日暮里校長!早く駒沢を連れて戻りましょう」

 

教室に戻り事情を説明するとクラスのみんなも安心したようです。一同は授業に再び取り掛かりました。

隆の心は依然としてもやもやと暗雲が立ち込めたままでした。隆にひそかに思いを寄せる広瀬明美はそんな隆を悲しげに見つめていました。そしてそんな隆をもう一人怪しげに見つめる人がもう一人。

 

1週間後。

隆は先週の出来事などほぼ忘れかけていました。そして昼休みは相変わらず隆の元には揉み券を持った生徒が並んでいました。その時、列の後方から隆の担任、上原先生がやってきて隆を廊下まで呼び出しました。

隆は訳も分からず廊下に出ると

「放課後、個別相談室に来なさい」

と告げられました。上原先生は他には何も言わずそそくさとどこかに行ってしまいました。

また個別相談室か・・隆は嫌な予感がして溜まりませんでした。

 

そして放課後。

隆は個別相談室に行き、ドアを開けるとそこには上原先生が座っていました。隆が入って来たのに気づくと急に立ち上がってなぜか慌てていました。

「まあ、まあ座って」

言葉にも焦りが見られました。隆は何か妙な感じがしました。

上原先生の顔を見ても一向に隆と目を合わそうともしません。一瞬目が合うと

「むふっ」

となぜかにやけすぐ目をそらします。

隆は「気持ち悪」と心の中で思いました。

「冬なのに、今日は少し暖かいな」

と上原先生が話し始めました。

(え、何この会話?)先生と世間話なんか変な気分で溜まりません。

「熱くないか少し?」

隆は何も答えませんでした。

「・・なんか、急に呼び出してごめんねさっきは」

(呼び出してごめんね・・?)隆はその言葉を聞いた瞬間、女性になった気分に陥りました。

そして少し間が開いて、上原先生はそっと口を開くのでした。

「あの・・これ誰にも言わないで欲しいんだが、俺、実はな・・お前が巨乳になった頃から、妙な胸騒ぎがするんだ。なんて言うんだ、お前を見る度、胸がドキドキして、そのドキドキした後に激しく締め付けられるんだ。この痛み、どこかで見覚えのある痛みだと思ったら、中学の頃、初恋の人が出来たときと全く同じ痛みなんだ。・・もう現時点で、先生がメチャクチャ気持ち悪いことを言っているのは分かっている。だから分かったうえで言わせてもらう。駒沢。いや、隆くん!・・好きです。付き合ってください!」

隆の全身に衝撃が走ったのは言うまでもありません。

「・・ちょ・・ちょなに言ってるんですか・・」

「おかしなこと言ってることくらいさすがに分かってるよ。隆くんより人生経験豊富だし。でも、もう抑えきれないんだこの気持ちが」

「・・こんなん、こんなんおかしいでしょう!」

「無理だというなら、せめてこれだけならいいよね?」

上原先生は右のポケットからある紙を取り出しました。彼の右手にはくしゃくしゃになった揉み券が握りしめられていました。



続く



以下、あまり紹介できなかったキャラクター紹介

・上山 登(うえやまのぼる)教頭



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・西日暮里 英(にしにっぽり すぐる)校長

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