監査法人の社員(監査責任者)は、社内において時勢により、発言権に強弱が生まれる。

 

監査法人の社員(監査責任者)には、以下のいずれかに強みを持てないと、社内を生き抜いていくことはできない。大きく分けて以下の3パターンがある。

  1. 政治(組織運営や教会活動)に特化

  2. 監査品質に特化

  3. 営業行為に特化

 

  1. 政治(組織運営や公認会計士教会活動)に特化に関しては、いつの時代も一定の強みを有している。どの会社でもそうだが、監査法人でも人事担当の社員はいる。人事担当の社員は昇進や、昇進に影響を与える配属(どのクライアントを担当するか)に一定の権限を有するため、常に一定の影響力を有する。後者の公認会計士協会とは、公認会計士及び監査法人はすべて協会の会員となることが義務づけられている自主規制団体であり、公認会計士協会に一定の影響力を有するようになれば、監査法人内でも一定の地位を獲得することができる。

  2. 監査とは、監査実施した結果を必ず監査調書に残す必要がある。全ての勘定科目かつ企業の一年間の企業活動を監査調書に残すため、膨大な作業がかかり、出来上がる監査調書も同大な数になる。監査調書には一定の水準を保つことが要求されており、監査品質に特化監査責任者は、監査調書の品質を一定に保つために監査調書のレビューに特化した人物である。監査チームは、経験も知識にも各人ばらつきがあるため、監査調書にも一定のばらつきが生じる。監査調書を査閲し、指示指導し、全ての監査調書を一定の水準に保つことが要求される。

  3. 新規監査クライアント営業を行い、会計監査人変更獲得に注力する人物である。

監査法人では、上記いずれか一つに偏った人物が大多数だが、1.~3.をそれなりの水準でそつなくこなせる人物もいる。

 

2.と3.には社内での発言力の大きさに反比例の関係がある。

会計士という人種は、営業が不得意な人物が多いため、通常は3.の人物が重宝されるが、今は東芝の会計不祥事があったため、2.の存在感が強くなっている。新規監査クライアント獲得よりも、監査調書の品質を保つことが必要とされているのである。

 

何が言いたいのかというと、監査法人は例年に比べて営業に重きを置いていないため、監査法人の変更をほのめかしてもクライアントに有利な条件(報酬や監査チーム体制)は引き出しづらい状況にある。J-SOX導入時もそうであったが、監査法人側が足元を見て交渉してくる可能性が高いのである。

個々のクライアント及び対応する監査法人によって、状況は異なるであろうが、個人的にはここ1年ぐらいの監査法人変更はあまりお勧めできない。

1年後には状況は全く変わっているはずなので、「急いては事をし損じる」ではないが、ゆっくり検討してもいいのではないかと個人的には考える。

 

監査役として、監査法人選任理由を明確にすることが要求されるが、新日本監査法人からほとんどのクライアントは変更することができない(他の法人のリソースの問題)ので、そこまで大げさにとらえる必要はないと思う。

 

監査法人変更を少しでも検討していれば、気軽にご連絡ください。何かしらのお役には立てると思います。

changing.audit.firm@gmail.com