昔々、あるところに、
ナギ君となみちゃんという2人の神様がいました。
その頃は、まだ土も海も、月もお天道様もなにもなくて、
ただ、くらげのようなモヤモヤが、プカプカと浮かんでいるだけでした。
そのモヤモヤを、二人の前にうまれた神様たちから、
これを固めて、なにかをおもしろいものを作ってほしい、と頼まれました。
そして、天のぬぼこという玉の飾りのついた長い矛を授かりました。
二人はそのモヤモヤの中に天のぬぼこを突き刺して、グルクルとかき回すと、
モヤモヤが回りながら固まって、どんどん大きくなって、青くて丸い大きな島ができました。
その島に降りて、これからいろんなものを作っていくことにしました。
どうしようか、
なにを作ろうか。
うふふ、
うふふ。
二人が笑って仲良くすると、あら不思議。
ナミちゃんのお腹が大きくなり、きれいな花畑が生まれました。
また仲良くすると山が生まれ、また仲良くすると、風ができ、海が生まれ、、
仲良くするたびに、いろんなものを生まれていきました。
あるとき、二人はまた仲良くすると、今度は火が生まれました。
ですが、火は、ぼーっと燃える、あの火ですから、
熱くて、熱くて、ナミちゃんは火を生むと、焼けて、死んでしまいました。
そうしてナミちゃんは、黄泉の国という、死んだ人ばかりがいる、
じめじめしてくらいところへ行ってしまいました。
ずっと二人でいたので、ナギ君は、
寂しくて寂しくて、毎日泣いてばかりいましたが、
あるとき、思いついたのです。
「そうだ、ナミちゃんを連れ戻そう!」
そうしてナギくんは、暗いじめじめした中を、
ちょっと怖かったけど、
大好きなナミちゃんに会いたくて、会いたくて。
がんばって、がんばって、
そしてとうとう、
なみちゃんのいる岩屋の前までたどり着きました。
「なみちゃん!僕だよ!ナギだよ!
覚えているかい?
さあ、ここから出て、一緒に帰ろう!
そして、また一緒に、いろんなものを作ろう!」
「その声は、大好きなナギ君。私も会いたかったよ。
ごめんね、でも、もう、いけないの。
私はもう、この黄泉の国のご飯を食べてしまって、
この国の人になってしまったの。」
「そんなのいやだ、やだやだやだ!
一緒に帰るの!一緒じゃなきゃ、だめなの!」
あんまり大きな声でナギ君が泣くもんだから、
とうとうなぎちゃんは言いました。
「分かった。
そこまで言うなら、一度、黄泉の国のアルジに、
一度お願いしてみるわ。
その代わり、約束があるの。
私が声をかけるまで、決して、この戸を開けないこと。
この約束を、守れる?」
「もちろん!守れる!約束する!」
「じゃあ、待っててね」
そうして、ナミちゃんは、行ってしまいました。
ですが、いつまで待っても、ナミちゃんは現れない。
もしかして、このままずっとここに取り残されるんじゃないか、
それとも、ナミちゃんが、黄泉の国のアルジに怒られて、困っているんじゃないか。
ナギくんは、待ちきれなくなり、
そして、とうとう約束を破って、戸を開けてしまいました。
中は暗くてなんにも見えません。
そこで火をつけて、中を照らしてみると。
なんと、そこには、なんとも恐ろしい、
ドロドロになりかけた、ナミちゃんの姿がありました。
「ひえーーーー!」
「みーたーなーーーーーーー」
必死で逃げるナギ君を、
なみちゃんは黄泉の国の仲間と一緒に、ナギ君を逃がすまいと、追ってきました。
ナギくんは、追ってくる仲間たちに、
ブドウや桃の実を投げて、果物につられてムシャムシャ食べている間に必死で逃げ、
ようやく、元も場所まで戻ってこれました。
そして、もうこれ以上追ってこれないように、
大きいな岩でふさぎました。
「まったくもう!せっかく会いに行ったのに!
もう二度と会うもんか!」
帰ってきたナギ君は、必死になって走ってきたので、
ドロドロを落とそうと川に入って、洗ったときに、気づきました。
自分が会いたくて会いに行ったのに、
自分が約束を破ってしまったこと。
こわくなって、にげてしまったこと。
ナミちゃんを怒らせてしまったけど、
それは、自分が悪かったのだ、と気づきました。
「ごめんなさーい」
なみちゃんに届くような、大きな声で謝りました
そうしたとき、なんと、お日様と月が生まれました。
今度ナギくんは一人でうむことができたのです。
そうして、さらにさらにいろんなものや人を生んでいきました。
話もまだまだ続くのですが、今日はここまで。
私たちのおじちゃんやおばあちゃん、そのまた昔々の神様も、
けんかをしたり、失敗もしてきたけど、
でも、ごめんなさい、っていって、またがんばるとね、
どんどん仲間が増えて、もっともっと、楽しいことが生まれるんだよ。
おしまい。
