いわゆる「酸っぱいコーヒー」として、
浅煎りは苦手なんだと決めつけていた。


コーヒーには、クリームではなくミルクを入れたい私にとって、
酸味×牛乳=あってはならない組み合わせ
だった。
喫茶店でも、カフェでも、珈琲豆販売店でも
浅煎りに手を出すことは、まずもってなかった。


ところが。


カフェで働きはじめた頃、
そこは自家焙煎した珈琲が飲めるお店だったのだが、
「お客様に説明できないといけないから」
「自分で淹れた時のテイスティングで、香りや味を確認できるように」

ということで、
浅煎りのモカを飲んでみることになった。



その店で一番美味しくコーヒーを淹れることができる、

私の中で、珈琲の神様と呼んでいたスタッフによって、
「香りが命」の浅煎りは、

それが損なわれないよう

高めの温度で、軽やかなテンポで

あっという間に淹れられた。


最初の一口目はそのままで。


うーーーん。酸っぱい。


「すっぱいです。」と、素直に述べたら

「酸味が強い、と表現するの!」と、神様に訂正された。



「砂糖を入れて飲むお客様のために、ぜひ砂糖も入れて飲んでみて。」と言われ、

普段はコーヒーに砂糖を入れない私だが、

これも仕事、と割り切って

コーヒー用のザラメを入れて飲んでみた。



ん?


んんんっ?


ええっ!



「これ何ですか?!」驚いた私を見て、

神はニヤリ。「コーヒーじゃないでしょ?」



そう。まるで、レモンを入れた紅茶のような飲み物になっていたのだ。



それは、黒くて、ほろ苦くて、心に深くしみるような、あのイメージのアレとは全く別物だった。



「もし、この浅煎りのモカを、真夏の暑い日に、氷で急冷させて、ガムシロ入れて飲んだら…」

神「最高だよ。」

くらっ。(めまいのする音)




それ以来、すっかり浅煎りへの苦手意識を無くした私は、

家で飲む用には、相変わらず深煎りを買っているけれど、

喫茶店や珈琲専門店で

浅煎りを淹れてくれるお店では、

浅煎りを注文して、その一杯を楽しむようになった。




珈琲は本当に、知れば知るほど奥が深い。