side…S
俺がひとりで勝手に悩んでいたのは、ほんの数日だったはずなんだけど。
雅紀に抱きしめられ一週間ぶりに感じるそのぬくもりはやけに懐かしく、心と身体が幸福感で満たされていく。
「あっ!そうだ!さっき翔ちゃん、何か言いかけてたよね?」
雅紀の腕の中で首筋に頬を寄せ、甘い香りを吸い込んでウットリとしていると。
さっきの車内での会話を思い出した雅紀がハッとして申し訳なさそうに俺を見た。
「ははっ。そうだ!そうだった。」
突然のプロポーズと結婚指輪に度肝を抜かれ、俺にも雅紀に伝えたい事があったことをすっかり忘れていた。
昨日から何回もシュミレーションしたのに結局このザマか…と自分に呆れながら、俺はリュックのファスナーを開けた。
「俺も雅紀のことが大好きで、世界で一番大切で、これからも雅紀と一緒にいたいと思ってる。」
「うん。」
「でも俺は雅紀と違って、ふたりの関係をまわりに言えずにいて。そんな自分が情けなくて、雅紀にも失礼なことをしてる気がしてて。でもそんな時にね。編集長にカミングアウトする事が全てじゃないでしょ!って言われて。俺が一番大切にすべきは雅紀を想う気持ちでしょ!って発破かけられて、目が覚めた。」
「編集長がそんなことを?」
雅紀は久しぶりに出た編集長の名前に懐かしそうにしている。
その手にリュックから取り出した封筒を乗せると、きょとんとしながら中身を見た雅紀が口をあんぐりと開けた。
「しょおちゃん!なにこれ!」
「なにって婚姻届だよ。」
「こ、こ、婚姻届⁈」
「うん。編集長とサトシくんに証人になってもらった。」
俺がドヤ顔で証人の欄を指差すと、まだ事態を飲み込めずにいる雅紀がまばたきをしている。
「今の俺たちがコレを役所に出せるかどうかは、また別の話なんだけど。でもコレが俺が雅紀に示せる覚悟の証で、これからの人生も雅紀と共に生きていくという決意表明です。」
「もおっ!翔ちゃん…。」
さっきまで男らしく俺にサプライズの結婚指輪をプレゼントしてくれていた雅紀の目からぽろぽろと涙が溢れる。
俺がその目尻を親指で拭い、頬にキスをすると恥ずかしそうに微笑んだ。
「翔ちゃん!婚姻届とか現実的過ぎだよぉ。」
「そうかぁ?ホントは雅紀みたいにオシャレなサプライズにしたかったんだけどさ。」
「でもボク、翔ちゃんのそういう直球勝負なところ、すっごく大好き。」
ニノが聞いていたら「バカップルめ!」とバカにされてるところだろうけど、幸いにも俺たちのまわりには誰もいない。
だから俺たちはここぞとばかりにハグをして、何度も何度もキスをした。
そして、突き抜けるような青空の下。
お互いの薬指に誓いの口づけをして、ふたりの記念日となる今日という日を心に刻んだ。
一か月以上ぶりにふわっと現れてみました(笑)。
すっかりご無沙汰してしまってごめんなさいね。
前回からあいだが空いてしまったので、少しさかのぼって読み返していただけるとお話の流れやテンションが分かりやすいかも。
ちなみに、ひとつ前のYOUR SONG 16にイメージ写真載せてみました。
鹿児島空港の展望デッキです♪