※今日のお話は約5年前のお話です^ ^


長年勤めた会社を数日前に退職した。


もう何時に起きても
誰にも咎められることもなかったけれど
これまでと変わらず
犬たちとの散歩に出かけた。


彼らにとっては
わたしが仕事を辞めたことは関係なく
いつもの時間に散歩に行くことを疑うことなく
待ちわびているからだ。


ただ、以前と違うのは
時間に追われていないということ。

勤めていたときは
朝の準備で時間がない中
散歩へ行っていたので
楽しむという余裕などなく
「こなす」という感覚しかなかった。



お決まりのコースを
今までより気持ちゆったりと歩く。

彼らが匂いチェックで
寄り道をしても、急かす必要もない。

いくつかの
チェックポイントの中で
特に気になるところがあったようで
念入りにチェックをはじめたため



ふと、空を見上げてみた。




見上げた先には

予想以上に
綺麗な青空が広がっていて

ふいに涙がこみ上げてきた。


ああ
いつから、空を見上げてなかっただろう。

毎日犬たちと散歩へ行っていても
通勤で自転車を漕いでいても
昼休みに外へ出ても
買い物で車を運転しても

わたしの目に映る景色は
ただ、流れていくだけだった。


空を見上げたり
季節の空気を味わったり
変わりゆく景色に目を留めたり

それは
ほんの少し立ち止まるだけで
できたことなのに

いつも追い立てられるように
毎日を過ごすことで精一杯で

その「ほんの少し」の余白すらも
自分に与えている余裕なんてないと
そんな風に生きていた

それが
社会人として「当たり前」だと思っていた


その「当たり前」が
わたしを少しずつ少しずつ
気づかないくらいの速度で蝕んでいて
耐えきれなくなったある日
とうとう決壊した


わたしの中に
突然開いた
大きな大きな決壊の穴を
どうやって埋めたらいいのか見当もつかなくて
身体も心も思うように動かずに
長年勤めた会社を退職することに
決めたのだった




空を見上げながら
いつのまにかこみ上げた涙は
静かに静かに流れていて

わたしの中で
決壊して大きく開いた穴の中に
優しい風が流れていくような感覚を覚えた


わたしの中に突然開いた大きな穴を

どうやって埋めようか
はやく埋めなければ

そんな風にばかり考えていたけれど
埋めようとしなくて、よかったのかもしれない

新しく開いたその穴は
余白のなかったわたしのために
わたし自身が必要としていたものだったのかもしれない


そう思ったら
大きく大きく開いたその穴から
たくさんの希望の光が差し込んでくるような気がして
もう1度空を見上げて
春を迎えようとしている瑞々しい空気を
大きく吸い込んだのだった








パートナーシップ・妊活応援カウンセラー
わたべいよ




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