うちは固定チームナーシングです。
で、自分の担当患者さんがいます。
鈴木まさお(仮名)御年90才。
私が一年❔❔二年❔❔担当しているおじいさま。
まさおさんは難聴が過ぎるおじい。
なかなか話が通じないし、人の話を聞かなくて、自分のことばっかり喋る。
そんなまさおさんと関わるときは、
ほかの患者さんに関わるのと同じペースじゃ、通じあえないので、
同じ目線で、ゆっくり話す。
時間がかかって
実は大変なんだけど。
そんなまさおさんが、最近よく言う。
「あんたじゃないと、誰もなんも聞いてくれない。あんたほど親切にしてくれる人いないんだ。ありがとう、頼むね。」
そんなことない。みんなちゃんとやりますよ、
と伝えた。
退院が決まったまさおさん。
まさおさんの長男の嫁に呼ばれて訪室すると、
新聞紙を握ったまさおさん。
「何も言わずに持ってってくれ」
❔❔
ごみ捨てを頼むにしては、顔がシンケンジャー。
嫁が、それじゃわからないでしょ、といって新聞紙を広げると、
可愛らしい小さな小銭入れがありました。
あー
お金か。
それは困る。
貰えないよ、
と伝えたけど、
嫁が、言い出したら聞かない人だから、
お願いだから持っていって…と。
ありがとう、と受け取って、師長に事情を説明し、
師長から返してもらうことにしました。
そのあと、まさおさんにトイレで会ったところ、まさおさんが言うのです。
「あんた…あのことばれてしまったよ」
ああ、そのようですね。せっかくもらったのにごめんね、でも気持ちだけで充分ですよ。
と伝えたら、まさおさんがうわあーーーと泣き出したのです。
「あんた、あの事でクビになったりしないかい❔大丈夫かい❔まずいことになってないかい❔」
なんとまさおさんは、患者からお金を受け取ったら私がまずい立場になることもわかっていて、
それでも渡したくて、隠す方法を考えて新聞にくるんでいてくれたのです。
「クビにならないかい❔やめないでずっといてくれるかい❔わしがまた帰ってきたら、またいてくれるのかい❔」
大丈夫大丈夫、ありがとうね、とまさおさんを抱き締めてなだめていたところ、
よだれと涙で、私のスクラブはぐっちゃになりました(笑)
まさおさんを部屋に戻して、
ナースステーションで師長にその話をしたら、
さらに師長から驚きの言葉が。
「あらー、じゃあまさおさんは頑張って嘘ついたんだわ。私には、
あら、新聞に挟まってたかい❔それはあれだ、あれを買おうと思っていたお金だ。えーと、えーと、枕だね。
なんて言ってたよ。うずらさんをかばおうと必死だったんだねえ。」
まさおさん。
ほんとにどうもありがとう。
まさおさんの涙とよだれでグッチゃになったスクラブが、
何よりの贈り物です。
ちょっといい話でしょ。
うずらでした。