合格発表まで時間があることもあり、予備試験論文についてのLEC、辰巳、伊藤塾の解説、答案例を比較してみた。思った以上に内容の違いがあるのに驚いた。

行政法
設問1でDの原告適格を検討する問題に関し、LEC、辰巳は、本件処分の名宛人が誰なのか明確にしないまま、名宛人以外の第三者の原告適格の規範に従って検討している。この点は、難問だが、本件処分が告示により効力を生じ、その後に所有者等に通知されるという法構造を考えると、伊藤塾の説明どおり、本件処分には名宛人がなく、Dは名宛人に準じる立場と考えるのが正解のように思う。そうすると、法律上保護された利益を検討するまでもなく、Dの権利が侵害されることを論じれば足りることになる。

 

民法
設問1(2)では、追完に変わる損害賠償が問題となっている。この点につき、415条2項によるべきとする潮見説と415条1項によるべきとする多数説の対立があるわけだが、出題者は、いずれの説をとるにしても他方の説をとらない理由を一言でも要求していたのではないか。LEC答案だけがこの点に配慮しているようである。辰巳答案作成者は潮見説を採っているがその解説者自身はその点に気付いていない。415条1項を検討してさらに同条2項を検討する必要性を説明すべき。
設問2は、相続人による自主占有への転換が問題だが、どの予備校も判例の規範を使っている。しかし、なぜ判例と異なり、自主占有への転換時が相続開始時ではないのか、一言説明が必要なのではないか。また、LEC答案には、取得時効の起算時を令和9年4月1日とし、時効完成時を令和29年3月31日経過時とする初歩的なミスがある。
 

商法
設問2は、管理義務監査役の問題。LEC、伊藤塾もそのラインで訴えを適法としている、辰巳は、管理義務監査役に触れないまま単に違法としている。

民訴
設問1の①は、Xが原告になり、AがXの代表者として提訴する方法が問われている。LEC、辰巳は、Aが任意的訴訟担当となれるかを検討しているが、Aが訴訟担当者になればA自身が原告になるから、そもそも設問の解答になり得ない。この点に気付いているのは伊藤塾だけ。
設問2の㋑では、既判力の作用が問われている。LEC答案では、㋐で本訴と別訴が矛盾し得るとしながら、㋑では前訴後訴が矛盾関係になく既判力は作用しないというのは、少なくとも淡白過ぎる。また、辰巳答案は前訴判決には積極的作用が生じないという結論を出しているがこれもおかしい。そもそも積極的作用が生じない判決などあるのか。

刑訴
②の適法性につき、辰巳だけが乙のボストンバッグがA宅の管理権に入らないという筋にしていたが、その乙が通常A方に居住する者であることを考えると、説得力がないと思われる。また、現場で逮捕が行われる模様がないにもかかわらず、緊急逮捕、現行犯逮捕に伴う捜索・差押えを検討するのは疑問である。