ジキです。

ご無沙汰しております。

『Béchamp or Pasteur?』の翻訳を継続していて、

なかなかブログを書けないジキでした。

なぜ、

ジキがパストゥールを追い続けているのかと

申しますと、

パストゥールの遺言の裏付けが

欲しかったからです。

パストゥールの遺言とは、

ベシャンは正しかった。微生物は何もしない。宿主の状態が全てだ。

というものです。

（引用：崎谷博征著：『ウイルスは存在しない！』，24頁）

実は、

この遺言には他のバージョンがあって、

Bernard is right. The microbe is nothing. The environment is everything .

（ベルナールは正しかった。微生物は何もしない。環境が全てだ。）

というものです。

因みにベルナールとは、

パスツールと共に低温殺菌法を開発した研究者です。

彼の死後、

彼の研究ノートが公開され、

そこにパストゥールの批判が書かれていたため、

パストゥールは激怒して、

家族に自分の研究ノートは公開しないよう

指示したという話があります。

閑話休題。

そのベルナールのバージョンの遺言なのですが、

出典は以下のサイトです。

Louis Pasteur versus Claude Bernard on the Causes of DiseaseTwo giants of scientific medicine in the 19th century, both French, propounded radically different paradigms for the understanding and treat...

greenearthfound.blogspot.com

そこにはこう書かれています。

There is an apocryphal story that Pasteur renounced his germ theory on his death-bed, saying that “Bernard is right. The microbe is nothing. The environment is everything.”

パストゥールが死の床で彼が提唱したgerm説を放棄し、次のように語ったとされる作り話がある。「ベルナールは正しかった。微生物は何もしない。環境が全てだ。」

このサイトの主は、

パストゥールの遺言を「apocryphal story（根拠のない話）」

と言っています。

以上の事から、

パストゥールの遺言の信憑性が非常に怪しくなってきたのです。

高い確率で作り話である

結論から述べますと。

非常に「作り話」である可能性が高いです。

何故なら、

今回の表題にも示しましたように、

ベシャンがTerrain説を提唱したこと自体が、

作り話である可能性が極めて高いことが分かったからです。

今回はそのことについてお話します。

蚕の病気

ベシャンがフランスで大流行した

蚕の病気を解決したことは

よく知られた話です。

彼は、

解決方法としてクレオソートを気化させて、

飼育箱に充満させる方法を提案しました。

この話を知ったとき、

terrain説のベシャンがなぜこのような対処療法を

行うのか理解に苦しみました。

ただ、

その時は、

なぜクレオソートなのかが書かれていませんでした。

クレオソートを使う理由

クレオソートを使う理由は、

ベシャンのビーコン実験の説明で理解しました。

ビーコン実験では、

クレオソートを使うと

大気からのgermを遮断することができることが分かっています。

つまり、

ベシャンは蚕の病気の予防法として、

クレオソートを使い、

大気からのgermから蚕を守ったということになります。

このことから、

ベシャンは蚕の病気の原因が

germであると考えていたということが

分かります。

ミクロザイマ病

ベシャンはこのgermをミクロザイマ（microzyma）と名付けています。

ミクロザイマとはビーコン実験で明らかになった生命体で、

カビが発生した原因であることを証明しています。

詳しいことは以前の記事でも話しているので繰り返しませんが、

「生命の素」のようなものです。

『ベシャンのビーコン実験は凄い』ジキです。ご無沙汰しています。裁判があったり、勉強してたりして、ブログを書くことから離れていました。今回は宣伝です。今、「 Béchamp or Pa…

ameblo.jp

前回の記事では、

このミクロザイマが病原性を有していることは

証明できないだろうと書きました。

ですが、

ベシャンはこの蚕の病気の研究で、

ペブリン病の原因がミクロザイマであることを指摘します。

より正確に説明すると、

異常に発達したミクロザイマが原因であるとしました。

これをベシャンはミクロザイマ病（ Microzymian Disease）と呼んでいます。

つまり、

ベシャンは病気の原因は微生物にあるとしたのです。

Terrain説とは真逆の寧ろgerm説に近い説を主張していたことが

この本を翻訳して分かったのです。

Terrain説の真相

以上のことから、

Terrain説が怪しいと思い調べてみると、

やはりありました。

引用します。

後世の研究家はべシャンの世界観を「Terrain Theory〜テレイン理論」と呼びました。「Terrain」は一般的には「地形」などの意味になるフランス語ですが、実際は通訳不可能な独特の概念で、べシャン自身その言葉を使ったことはありません。べシャンが発見した生命の最小単位であるミクロジーマ（microzyma）が活動する自然界に「Terrain」という語が当てられたわけですが、それなら、もっと相応しい言葉があるじゃないか！と思いました。日本語の「いのち」です。「Terrain」以上に通訳不可能な独特の日本語である「Inochi〜いのち」は、べシャンの科学にさらなる光を与えてくれる気がします。

アントワーヌ・ベシャンの名誉を回復する運動 – 日本プロライフムーブメント

japan-lifeissues.net

ジキにとっては衝撃的事実ですが、

ベシャンがミクロザイマ病を主張していたことからも、

ベシャンがterrainという言葉を使ったことがないことは、

かなり信憑性が高いと思われます。

このサイトで書かれているように、

ベシャンの死後の研究者たちによって、

自分達の主張を

既に亡くなっていたベシャンに語らせた

ということになります。

ここからは憶測ですが、

最終的にはgerm説を唱えるパストゥールに対して、

パストゥールが敵視していたベシャンを二項対立のようにして、

germ説とterrain説を対照的に表したかったのではないでしょうか。

germ説以前のパストゥール

ベシャンがミクロザイマ病を主張しているとき、

パストゥールは苦し紛れにそれを批判するのですが、

これは病気ではないと主張していました。

引用します。

私は蚕の病気は現実に存在しないと信じたい気持ちが強い。蚕の病気に関する私の考えを明確にするのは難しい。肺結核（pulmonary phthisis）の影響と比較するのが一番である。今年の私の観察により、次のような意見が強くなった。この小さな有機体（organisms）は微小動物（animalcules）でも隠花植物（cryptogamic plants：花をつけないで胞子で繁殖する植物）でもないということである。私にはこう思える。この有機体は、主にあらゆる器官の細胞組織である。そして、この器官が、それが小体（corpuscles）に変化したり、その有機体を生成したりするのである。

パストゥールは深い考えも無しに上記のような主張をしており、

それを裏付ける実験もしていないのですが、

病気の原因は微生物によるものではないこと、

この有機体は多形性であること、

について述べており興味深いです。

何故なら、

Terrain説や千島学説に近い主張をしているからです。

もし彼がこの主張を裏付ける実験に成功していたら、

世界は今とは全く違う世界になっていたと思います。

つまり、

感染症が存在しない世界であり、

科学的な言説がより意味を持つ世界です。

ジキの見解

さて、

ベシャンは2年の歳月をかけて

実験と検証を繰り返し、

科学的な手法でミクロザイマ病を主張しました。

以上のことから、

germ説は正しいと言えるのでしょうか？

私はそうは思いません。

まず、

未だにgerm説の正しさが証明されたことがありません。

ベシャンが証明したじゃないか！

と言いたい方もおられると思いますが、

彼はなぜミクロザイマが異常な発達をしたかまで説明していません。

ここで、

櫻澤如一氏を紹介したいと思います。

彼の著書に『パストゥールの審判』という本があります。

その中で、

この蚕の病気について述べているところがあります。

引用します。

またこんな極陰性病原体が発生する原因は陰性な条件(食物）すなわち桑です。桑が陰性になり過ぎているのです。その原因は肥料です。キツト陰性の人造肥料（たとえば燐酸や加里）をたくさん使うからでせう。この二点を改めれば、こんな簡単なことゝ、即ち桑に陰性の人造肥料をやらないことゝ、蚕の室の温度を高くしないことによって微粒子病は完全に防ぐことができるのです。（現代仮名遣いに直しています）

日本から送った蚕が当時フランスで病気にならなかった事実から、

櫻澤氏の主張の蓋然性は高いと思います。

病気の原因のほとんどが食生活にあるという主張にも重なります。

以上のことから、

ベシャンが原因だと考えたミクロザイマの異常発達は、

蚕が食べた桑が原因であり、

ミクロザイマの異常発達は、

病気の原因ではなく結果であったと思われます。

ちなみに、

これはド素人の個人的な見解であって、

これが絶対に正しいと主張するものではなりません。

ご意見を頂戴するのは結構ですが、

論破を目的とする議論は無視します。

ヘーゲルの弁証法的な議論でお願いします。

まとめ

今回はTerrain説がベシャンによるものではなないこと、

そしてベシャンはgermが病気の原因であることを主張していたこと、

について述べました。

これから更に読み進めれば分かってくると思いますが、

パストゥールはこのベシャンの説を横取りして、

germ説を唱えることになります。

この時、

このgermは細菌ではないことに注意が必要です。

ベシャンはミクロザイマの意味で使っています。

ミクロザイマは生命の素です。

だからgerm「芽生え、起源」なのです。

今回はこの辺で終りにします。

最後までお読みいただきありがとうございました

また、お会いしましょう

したっけねー

Terrain説の嘘