Brilliant Stage ~フレンボーパークのきせき~

Brilliant Stage ~フレンボーパークのきせき~

これは、とある遊園地「フレンボーパーク」で起きる奇跡の物語。

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「(いつもはライブハウス中心で活動しているから、お祭のステージってどんなんだろう?)」

仕事の依頼を受けてからちょっと心配していた。
特にテーマみたいなものは無いし、どういうお客さんが来るかも分からないから選曲が難しい。
でも私は今年、1stminialbumを発売してから「OKiTAMAKO」として活動
を始めた。
せっかくだからオリジナル曲を歌おうと思い午前中は歌の練習をしてきた。

さっきまで焼きそばを食べたり、金魚すくいをしたりして楽しみつつお祭りの雰囲気を味わってたけど、もう間もなく本番でドキドキしてきた。
その時だった。


OKiTAMAKOさん、出番です。お願いします。」


スタッフさんに呼ばれてしまった。 


「よーし、楽しんでくるぞー!!」



私はOKiTAMAKOという人のライブを客席の後ろの方から見ていた。

(声、綺麗だなぁ。)

プロも参加しているので「役所の同僚達に見られる」という辱めにも並ぶと共に、自分達の歌の完成度に対して不安が押し寄せてくる。

スタッフルームで待機しているのも不安である。

祭りの出店を見るのもこのタイミングで同僚に会うのは避けたい。

他の人の本番を見ているのもこれはこれで緊張する。



「(もう少し落ち着ける場所は無いだろうか。)」


そう思った時、拍手が聞こえた。
周りのお客さんからの拍手が絶え間ない。

ところで肝心のお客さんの入りの状況なのだが、前列から中列はある程度埋まっている。
後の方は、まあまあと言った感じか。
多少内容によって前後はしているし、入れ替わりも多い方だと思うが、祭りとしてはサブイベントになってしまうステージイベントでこれだけの人が集まっているのだったら相当多い方だと思う。

もう少ししたらゲストのステージもすべて終了してしまう。
そうしたら、いよいよ自分達の出番だ。

ここへ来てお客さんの入場より退場の方が増えてきた様な気がした。
恐らく、幸か不幸か自分達のライブステージ終了から祭りのメインである「鎮魂の儀」(大松明)までの時間が無い。

先にいい場所を取ろうとしている人は早めに行くだろうから、そういった人達がこのタイミングで退場しているのではないだろうか。


これではゆりが高木の条件をクリアする可能性がぐんっと低くなってしまう。
しかし私は同僚に見られる可能性も低くなる。

とも複雑な思いだ。

(とりあえず成功か失敗かは一先ず置いといて、精一杯頑張るだけだ。結果は後からついてくる。))

そう思い、着替えを含めた準備の為、スタッフルームへ戻った。



着替え終わり待機している。
自分がスタッフルームに帰った時には2人とも着替え終わっていた。
ちょっと前まで「馬渡さん遅い!!来ないかと思った」と怒られているところだ。

今は機嫌も直り、部屋の中のモニタで上演中の町内会の人達のフラダンスチーム「カサブランカ」の踊りを見ている。
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人とも「腰の動きすごーい」と喜んではしゃいでいる。

演目が終わると舞台設営部がいよいよ我々のライブの準備に取り掛かる。
この準備が終わるとついに本番だ。

思い起こせばお客さんに見てもらうというのもマイクゥの時以来。
頭の中が真っ白になりかけている。

「さぁ、頑張っていきましょう!」

ゆりが一声かける。

「はい!練習の成果を発揮しましょうね!!」

それに答えるまり。

「馬渡さんもね。」

確認するようにゆりが言ってきた。

「あっ、あぁ。」

緊張のあまり言葉が出てこなかった。

「それではお願いします。」

スタッフから声が掛り私たちはステージへと向かう。

ついに運命の幕が開こうとしていた。

私はゲートを出てから20分掛けてようやく杜に着いた。
社ではなく祠が正解か。

聞いた話のイメージではもっと「そびえ立った」、「立派な」という形容が合うと思っていたが、実際は異なり林の中にこじんまりとあった。
只々深緑の中では赤く塗られた小さな鳥居の方が目立つ。

祠の前に立ち、私は早速手を合わせ今日のライブの成功を祈った。

祈り終わり深呼吸をする。

「よしっ!」

その時、背後から視線を感じた。

振り返ると人間の足で3歩程先に白い子猫がいるではないか。

「(いつの間に・・・)」

眼が合うとその子猫が私に近寄ってきた。
思わず屈み子猫の頭を撫でる。
あまりに可愛く擦り寄ってくるので喉の辺りも撫でてやると目を細めて気持ちよさそうに寝そべりだした。

(んん??ゆりぺそって。この猫の名前かな。)

首輪の所に小さなタグが掛けられてあり、そこに「ゆりぺそ」と書いてある。
思わず私は、「ゆりぺそー」と呼んでみると、返事するかの様に「にゃあ?」と鳴いた。
自分の名前を理解しているのだろうか。思わず笑ってしまった。

それから何かを思い出したのか分からないが、そのまま「ゆりぺそ」は林の中へ駆けていってしまった。

「(・・・行っちゃった)」

かわいい子猫にまさかこんな場所で会えるなんて予想もしていなかった。

なんだか幸せな気持ちになれた。


その後はフレインボーパークへ戻り、午前中から祭りの開場時間までは準備が遅れている班の手伝いをしていた。

そしていよいよ16時半になり開場した。
自分は16時になった時点でステージのスタッフルームの椅子に座って
いた。

気が付くとまりとゆりの2人も前のパイプ椅子にいる。


「あれ?いつのまに2人とも来ていたんですか?」
「もおー。私達が来てから大分経ちますよ。」

とゆり。


「なんだかずーと何か考えているような、苦しんでいるような顔していますね。分かりました!!緊張してるんですね?」

にっこり笑顔になってそう聞くまり。

「まぁ緊張と言えば緊張なんだけど。いやーちょっとね。」

顔を引きつったまま返答する。

みんなの手伝いが終わり少しずつ自分達のステージの時間が近づいている事を意識してからは、役所の同僚に見られる恐怖が慢性的に襲い掛かり心臓の鼓動が大きくなっていった。
何とか祭りを楽しんでいる自分を想像するのだが、途中で同僚に声を掛けられ冷やかされる自分の姿を見てしまうのだ。
その為、実際に祭りに参加する気持ちにもなれない。

「ねー、馬渡さん。ホントに大丈夫??顔色悪いですよ。」

心配そうにまりが聞いてくる。

「あー、大丈夫。」

もう一度作り笑いをして答える。

「そういえば、2人の方こそ・・・。」

緊張してないですか、と聞こうとしていたが2人の性格にしても今の2人の姿からも緊張している様には到底見えない。

2人はお祭り行かないんですか。まだ始まったばっかりでしょ?」

と聞き直す。

「私は立場上責任者みたいなものですから楽しんでられませんよ。一応待機という事で。とは言え、後で見に行こうと思いますけどね。」

冗談っぽくゆりが言う。

「始まったばかりって・・・。始まったばかりと言えばそうですけど。もう18時ですよ。私は今から見てきます。」

と、まりは言いスタッフルームを出て行った。

(ええっ!!)

内心驚いた。時間にだ。

まだ開場をしたばかりだと思っていた。
自分の時計を見ると確かに18時である。

「(18時と言えばステージイベントが始まる時間だ。そんなにずっとここに居たのか。このままここで考えていても仕方ないし、客席でステージでも見てるか。)」

この火神祭は屋台や出店、大松明を燃やすというメインイベントがある事は既に述べたが、ステージはイベント会場として開放する。我々の班はそれに向けて準備をしていたのだ。
イベントの内容はライブや楽器の演奏、手品、ダンス等様々である。

私ももう少しでステージが始まる為、客席へ向おうと席を立った。

その時、急にスタッフルームの扉がノックされた。

「どうぞ。」

ゆりが言うと扉が開かれた。
こには見ず知らずの浴衣姿の女性が立っていてゆりの方を見る。

するとニッコリと笑って、

「久しぶりー!!ゆりー元気?」


とゆりの方へ向かった。
ゆりもパッと顔を明るくして立ち上がり、

「あれ?HaKKa!!久しぶりー。いつ戻ってきたの?」

と言って笑う。
ゆりの友達なのだろう。
自分は話の腰を折らない様、会釈だけしてスタッフルームを出て行った。

廊下を出てからもしばらくは彼女達の笑い声が聞こえてきた。



西ルートに沿ってしばらく歩いた。
そこには頑丈そうで1人で運ぶには無理があるベンチがある。
こういったちょっとした物も本番の時には撤去するというのだから大変である。

自分は堂々とそのベンチに腰掛けた。
ベンチは夜の涼しさを含んでいて、尻と背中から伝わるひんやり感がとても気持ちいい。

そういえば、このベンチで座るのは初めてだ。
始めてフレンボーパークへ来た時に施設内を周ったが、さすがにベンチを一つ一つ座り比べてみるとかそういう意味の無い事はしていない。


今このベンチに座って初めて気が付いた事があった。
それはこのルートは他のコースと比べ自然が豊富であり、外観を損なう様な背の高い遊具が全くないという事だ。
加えて、木々の間隔が適切に取られているから見通しもいい。
確かにこのコース自体は自然公園の広場へ繋がっている事もあるから、その点を配慮して設計されたのかも知れない。
意図的か偶然かは別として、祭りを行うには実に適していると思う。

丸めていた背中を正し正面を向く。
この位置からでは、やっと見える林がある。
奥の方まではさすがに見えないが、先程話した小さな社がそこにある。

「あとで行ってみようかな。それにしても今日はいい天気だ。」


そう言って今度はベンチに横になる。

すると、朝が早かったせいかなんだか瞼が重くなってきた・・・。





「ファ~ア、もう朝かぁ。そろそろ準備しなくちゃ。」


私は朝の準備を始める。

やる事はいつもと同じなのだが、緊張からか少し早く起きてしまった。


支度をしながら私はいろんな事を考えた。

今日の祭りの事、自分達が出るステージの事、高木に言われた事・・・。

そんな中、ふと友人の事を思い出した。



「あの子今年も来てくれるのかなぁ。」




「やっぱり地元で迎える朝はいいなぁ。」


私ことHaKKaは夫の仕事の都合で地元からは引っ越した。
越してからはまだそんなに経っていないが、新しい土地にも慣れた。

でも今は家には夫を残し、昨日から私だけが地元に帰ってきている。
喧嘩をしたからではない。
毎年この時期には祭りが開かれおり、それに参加する為だからだ。

自慢ではないけど小さい時から毎年参加している。
大松明の迫力や祭りの雰囲気が好きだし、夏の終わりを感じられる。また地元の友達にも会える。

それと高校時代の同級生が就職している遊園地が祭りの会場なのでちょっと様子も見たいというのもある。

「あー待ちに待ったお祭り、楽しみだなぁ。夕方になったら浴衣に着替えよーと。」






「起きろー。馬渡さーん。朝ですよ。」

目を開けるとそこにはまりがいた。

「あれ?どうしたの?まりちゃん。」
「あれ?どうしたの?・・・じゃないですよ!! それはこっちが聞きたいです。もう少しで遅刻ですよ。」

なんだかよく状況が分からないが寝てしまっていたらしい。
なぜこの時間に、そしてあの場所にまりがいたのかが不思議である。
とりあえず起こしてくれて助かった、ありがとうと言う時間も無く事務所へ走っていった。


事務所に着くとすぐに今日のスケジュールの確認を行った。


今日のスケジュールは、まずは朝から祭りの手伝いである。
昨日から装飾を開始した班もあれば、これから開始の班もある。
内容によって朝から動けない班もあるだろう。
それぞれが違う仕事をする。


祭りの一般客の入場開始時刻は1630分からであり、今から7時間半程もある。
朝の静けさからは創造できないくらい多くのスタッフが関わっている事だし余裕で間に合うだろう。

私とゆりとまりの3人は本番があるのでステージ周りの準備をする。
しかしそれが終われば比較的自由な時間を貰える。

スケジュールの確認が終わり早速祭りの準備に取り掛かる。
私たちはステージへと向かう。


ステージに着いたのだが、機材の準備は舞台運営部の人達が担当する事になっており、舞台ステージやその周辺の装飾も実は昨日の朝から始める事ができていたので殆ど終わっていた。

まりは手伝う事がないと分かると16時まで他の班の手伝いをしてくると言って行ってしまった。
ゆりも父親を手伝うという事で居なくなってしまった。

事務所は今日は使わないという事なので祭りが終了するまで防犯の為に施錠をされるという事だ。
なのでいつもの仕事もできない。
本格的に露店の人達が来るのも午後からなので本当に何もする事がないのである。
朝の続きで園内を見て周ろうかとも思った。
しかしよく考えると、今日は火の神様を鎮める祭りである。
祭りのメインイベントである大松明は見る事ができない。

という事で先にと言おうか成功を祈願を含めてお参りしようと決め、裏の林にある杜へと向かった。