「あの家が無くなれば、みんなスッキリするよ」
姉はシラフでそんな事を言った。
どう捉えたら良いのか、どの選択肢を選べばハッピーエンドになるのか。乙女ゲームを多少かじっただけの私にはとても困難な文字列で、喉と心ににつっかかったいざこざを温めのジンジャーエールでグッと飲み込む事しかできなかった。
それが、八月の真ん中くらい。
まだまだ暑くて夜も寝苦しかった。
あの日は、なんちゃら流星群が見える日だった。
私の地元は少し栄えた都会の田舎。
普段星がものすごく見えるわけでもないのに、あの日はドラマのようにアニメのように空が星が綺麗だった。私には切なくて、なんだか辛かった。
そして、ひとつ、流れ星を見た。
一緒に見ていた無職の兄は「金、金、金」と笑いながらつぶやいた。私も釣られて笑った。
お姉ちゃんは「えー、見えなかったー!もう一回こないかなー」と。
あの時みんな一緒に空を見ていた。
間違いなく、一緒だった。家族だった。
わたしの大好きな家族だったんだ。
姉の言った、思った、家はしがらみだったのだろうか。あの家が好きなのは私だけで、他のみんなは嫌いだったのだろうか。だとしたら、好きになってもらう方法は無いのかな。余計なおせっかいなのだろうか。無力なのだろうか。
皆で過ごした赤い三角屋根の家は無くなった。
この前まであの家は呆然と立ち尽くしていたのに、次見た時は綺麗な更地となっているのだから心が頭が理解に苦しんだ。カールじいさんのお話のように、風船をつけて飛んでいった説さえ私の中で出てきた。
いや、壊したんだ。
家族みんなで壊したんだ。
実家がなくなっただけで、家族が解散になったわけじゃないんだから、こんな暗闇を眺める必要は無い。見えない何かでつながっていて、困った時は助け合える。
なんて、でも、やっぱり遠く離れて暮らすみんながもっと遠くなった気がする。
お父さんは「人間になりたい」と言って自転車で旅に出た。
「父親らしいこと、何も出来なくて、こんな姿見せてごめんな」と声を震わせながら彼は伝えてくれた。
正直こころのどこかで「ほんとだよ、くそじじい。」って思ってるかもしれないけど口から出たのは「そんなことないよ、ありがとう」だった。
言葉は嘘ではない。