生きていれば「お金の問題」は次々に起こります。そのために私たちは「何かあったときのため」の貯蓄をします。まだ貯蓄が心もとないとき、「何かあったときのため」の保険に頼る時期もあるでしょう。でも、貯蓄の「何か」と保険の「何か」では、はるかに貯蓄の「何か」のほうが融通無碍です。貯蓄を増やして、できるだけ早く保険からの卒業を目指しましょう。

早期に保険から卒業する秘訣は二つです。第一にシンプルで割安な保険を選ぶこと。入院をするのか健康で長生きするのか、将来は不確実です。だからこそ、請求漏れや不払いの可能性の少ないシンプルな保障で、貯蓄を妨げない割安な商品を選ぶことが重要です。第二に貯蓄が増えるにしたがって保険を減らしていくこと。

貯蓄が増えて余力が高まってくれば、保険に頼らなくてはならない部分は減るはずです。漫然と保険に加入するのではなく、適宜見直しをして、浮いた保険料を貯蓄に回すことができればさらに余力が高まります。

「あれも心配これも心配」と様々な保障を買い続けますとなかなか貯蓄が増えず、いつまで経っても保険に頼らなくてはならない悪循環に陥ります。簡単に見直しができるシンプルで割安な保険を利用して、生きるための貯蓄を増やしましょう。
「若いうちは大丈夫だけど、老後の医療費のことが心配」との声をよく聞きます。そのため、民間医療保険は終身保障が安心だと考えがちです。しかし、終身というのは何年くらいを想定しているのでしょうか。

平均余命を考えれば、30歳代の人は50年以上、40歳代は40年以上、50歳代は30年以上…。

「今」販売されている民間医療保険が、今後数十年間にわたって有効であり続けると考えるのは無理があるのではないでしょうか? 

ここ数年間の医療制度改革を眺めてみても、「平均入院日数の縮小」「医療から介護へ」「在宅療養への転換」など、医療施設への入院は抑制される方向に流れているのは明らかです。また、制限回数を超える診療など、従来は保険診療の対象だったものが全額自己負担になっています。このように考えていきますと、さほど入院はしないけれど医療費負担が重く、在宅か介護施設で療養をするという将来像が浮かび上がります。

現時点で販売されている民間医療保険は医療施設への入院が基本で、給付金額などの保障内容は保険期間を通して変わりません。たとえ終身保障であっても、1回の入院で受け取れる入院給付金には日数限度があります。長生きしたときに頼りになるのは、何にでも使えるお金です。「終身が安心」というイメージにお金をかけ過ぎますと、何事もなく過ぎてゆく日常生活に回るお金や、健康維持・病気予防に回すお金が少なくなります。
私たちの日常生活はリスクが一杯です。「予定外にお金がかかってしまうリスク」や「お金が足りないリスク」など、経済的リスクに限ってみても以下のようなものが考えられます。

私たちが手にする収入には限りがあります。限りある収入の中から、生活費や住居費など、暮らしのための費用を配分し、将来に備えて貯蓄をします。まだ貯蓄が少ない段階で、一家の生計を維持する人が亡くなるとか、大病をして入院をするといった事態に遭遇しますと、手持ちの貯蓄だけでは対応しきれないかもしれません。そのようなときのために、保険料というコストを払って保険に加入するのです。

ただし、保険に加入したからといって、困ったときにお金が払ってもらえるものではありません。保険金や給付金を受け取れるケースは、契約に定められた「支払事由」を満たしたときに限られています。不安のあまりに保険料負担が過大になれば、保険金や給付金支払いの対象とならない経済的リスクへの備えがおろそかになります。つまり、万一に備えて保障を手厚くすればするほど、それ以外のリスクが高まるという結果になるのです。

日々の暮らしは、保険金支払の対象にはならないけれどお金が必要になることの連続です。ちなみに図中の様々なリスクのうち、民間医療保険で対応可能なものは青部分のみです。掛け捨てがなく、請求漏れも不払いもない、万能の保険である「貯蓄を増やす」ことを保障設計の基本とし、保険に頼るのは貯蓄では対応しきれないリスクに絞るというスタンスが合理的です。