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第一章 ことのはじまり(1)

 彼は山の奥にある古い捨てられた寺にいた。街から道路が通ってなく、歩いて4時間かかるところであったため、そこには彼しか住んでいなかった。自給自足の生活をしていくには割と難しくなかった。というのも、昔の修行者はみな自給自足していたから、畑も井戸もあったからだ。
 はじめて訪ねたとき、彼は木陰で目を閉じ、精神統一をしているみたいに座っていた。それを邪魔したくなかったから寺の門の前で止めるのを待とうと思った。胡座をかいているように見えるが、よく見るともっと複雑に絡めてあって、両足の裏が上を向いていた。まるでお坊さんの様だった。彼が出家した話しは聞いていないし、現に彼の髪は伸び放題だから仏道修行をしてるわけではなさそうだった。
 いくばくかの時間が過ぎていても起き上がる気配はなかったから、その寺を散策してみた。さほど広くはなかったが、一人が過ごすにはあまりある広さであった。庭は永く手入れされてなく、趣のかけらもなかった。まさに寂寥とした廃墟のようであった。仏像が置かれる本堂を覗いてみたが中には何もなかった。これで彼は仏教に帰属したわけではないと確信できたわけだが、彼は今年の秋で三十代を卒業する書道家としては若い歳で隠居をしている動機をまたもや考えさせられたのだった。
 日が西の山に乗っかり始めた頃に彼はようやく起き上がってきた。わたしを見、表情を一つ変えずに軽く会釈して「お早うございます」淡々と言って本堂の北の方に歩いて行った。疲れを感じさせないような軽い歩調だった。わたしはただただ立ち尽くすばかりだった。黄昏れる時に「お早う」だって!?しかもそれだけ??と訳がわからず、現状を懸命に整理しようと試みていたのであった。
いくら頭を捻っても埒があかないので、その日はそれについて考えるのを断念して、明日までどうやって過ごすのかを考えた。野宿は想定外だったからテントは持ってなく、となると寺に泊まるしかない。本堂は空いているから借りていいかと聞いてみようと思ったところで、日が完全に暮れた。どこからかガサガサと音をたてはじめ、山間を吹き抜ける風はヒューヒューと冷たさ以上に寒気を誘った。これ以上なんか起こる前に速く温もりを取りたかったので、急ぎ足で、本堂の背にある明かりのある方に向かった。
「ごめんください、今日訪ねてきたばかりの者ですが、本堂をお借りしてもよろしいでしょうか。」と呼びかけたのに対し、返事はあまりにも素っ気ないものだった。「好きにせい。」

お初です

友達の要望より、昔書き捨てた拙文を載せることにしました。まだ文章の序盤につき、これから更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。

また、本blogに載せる予定の文はすべてフィクションですので、実在するあらゆる名称とは関係がございません。

最後に、これはあくまで作者の気まぐれによって書かれるものですので、誹謗中傷は多いに意欲を削ぎますので、その辺は大人のマナーで常識をもってして行動して頂きたい。